8日目(夜)23 ガンパレード・オーケストラ(白)(3)

 ロボはうわ、俺格好悪いと思いながら、こそこそと校舎に戻って中を確認した。
目標の人がいないのを確認して、厩舎に走る。

 目標はいた。
包帯を巻いて丸まって寝ている紫苑の雷電、ジジの毛皮につかまってあきもせずもふもふしていた。
ジジが、顔をあげた。ジジは少し頭をさげた。

ロボは少し微笑んで笑ってやると、声をかけた。

「失礼、いいですか。石田咲良さん」

あわてて起き上がり、両手で髪の毛を整える咲良。
「現在整備中ですがなんでしょう」
ロボは相手が分からない程度に少し優しく微笑むと、口を開いた。
「大統領補佐官の對馬です。貴方の大事な人を少し、お借りしたい」

「駄目です」咲良、即答。
「命令でも?」ロボは小さい子に言うように優しく言った。
「め、命令で、も……」下を向いて、段々小さな声で言う咲良。彼女に刷り込まれた模造記憶は強力だったが、彼女は自分のわがままだか愛情だかでそれを押し切ろうとした。
「だ……」
笑うロボ。咲良の痛みをやわらげてやるために、口を開いた。
「そうですか。じゃ、力ずくで借りていきます」

びっくりしてロボを見る咲良。
今まで(主として航と百華と竜馬が)過保護や限度をはるかに越えて大事にしていた関係で、咲良は無理にどうこうというのは、経験したことがなかった。

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一方その頃谷口は、ここ最近、なんとも距離感をつかみそこねている相手その1と歩いていた。
横山亜美である。

 横山は、その態度が気に食わないので、無視して、手を半ばまで伸ばせば頬に触れられる距離で、歩いた。
それで男女が、微妙な距離で歩いている。

「岩崎のところにいってやれ」
「谷口はどうするんですか?」
「決まっている。隊長を連れてくるんだ」
「私もいきます」
「あのなあ」
「犬に負けているくせに」
おおきく上半身が揺らぐ谷口。痛い所を突かれた。

「ま、まだあの人はだな。そういうのが可愛い時期なのだ」
「犬に負けているくせに」
「うぐ」
「犬の代替品かも、谷口、犬系だから」
胃痛でぶっ倒れる谷口。
実は最近その辺を気にしていた谷口だった。しかし軍用犬に嫉妬とはいくらなんでも自分のレベルが低いと思って黙っていたのだった。
「嫌なことを言うな」
「貴方が悪いんです。わ、私が、いるのに……」
横山、修行が足りない。途中から赤くなった上に最後まで言えなかった。
「い。いや、あのな。たしかに俺たちつきあいは長いが」
谷口はもっと修行不足だった。思考停止した。この人物、感情が絡むと全部駄目駄目である。
「幼馴染で結婚するのは黄金パターンだって雪子さんが言ってました」
「俺の幼馴染は航のほうだぞ」
「航と結婚する気ですか」
「いや、だからそういう意味ではなくな。あー、いや」
真顔になる谷口。
「きいてくれ」
すばやく手で自分の耳を塞ぐ横山。心底おびえている感じで、こうなると谷口は何も言えなくなってしまうのだった。

 耳の奥から声。
目つきが変わる谷口。目をぎゅっとつぶって座り込む横山。
谷口は0.1秒で足の指先の力だけで起き上がると、全力で厩舎に走り始めた。

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