3日目(昼)4 白いオーケストラ、ターニの帰還 合同ED01

 場面は、広島に戻る。
青森で佐藤が暗い思いを実行に移し、広島で青が斉藤と舞に料理の特訓をしていた日の、夜の話になる。

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 すでに日も暮れ、平和な夕餉の煙が、薄く上がっていた。
校舎の前では山口が一人、岩崎を待って立っていた。

 その様を遠くの木陰から見つめ、竹内と岩崎は、素早く身を隠した。
もっとも素早かったのは岩崎だけで、竹内は途方にくれていたようだった。

頬をかいて、口を開く竹内。
「ねえ、岩崎さん、もう入りましょうよ」
岩崎はさらに隠れながら、言った。
「駄目だよ。竹内くん。僕ぁ、……その、なんというか、どんな顔してみんなにあっていいものやらと思ってね。もちろん葉月さんとは色々話したけれどね、だけど」

「謝ればいいんですよ。ごめんって。それで十分です」
岩崎は竹内を見た。と言うより、見上げた。岩崎はしゃがんで様子を伺っていたのである。
「……それですめば誰も苦労しないよ」
竹内は笑った。3年の旅の締めくくりになるような、そんな笑顔だった。
「それですむ幸せな人間なんですよ。貴方は」
昔の自分なら言えないことを、今の竹内は言えた。竹内は優しく言った。
「それを忘れないでください。みんなは岩崎さんを心配しているんですよ。僕も」

岩崎、直接的な好意には弱いというか逃げてまわるところがある。この時もそれで逃げ場を探して目をさ迷わせて、挙句に、小声で早口で言い返した。
「ずいぶん大人びたことを言うじゃないか」
「ええ。まあね。さ、いきましょう」手を伸ばして岩崎をひっぱりあげる竹内。
「あ、いや、心の準備が」
「いいからいいから」

岩崎は背中を押されて表情に困ったあげく、顔を歪ませて歩き、最後は泣いて山口に抱きしめられ、ドアをあけて校舎の中に入っていった。校舎の中からみんなの歓声が聞こえる。

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 竹内は、校舎の中には入らなかった。
入ってなにもかもを元に戻す前に、やらなければならないことがあった。

顔をあげて見れば決して暖かな夕食とも団欒とも縁がない、1人の男が立っていた。

「ありがとう、ロボ、さん」竹内は、それだけしか言えなかった。
「気にするな。これも、仕事さ」狼王の名を戴くその冴えない中年は照れくさそうに帽子を被りなおしながら言った。

つまりはそれが、最後の別れであった。
ロボは、背を向け歩き出した。軽く、手をあげて、達者でと、そうしてまた新しい、世界の危機と戦うのだ。永劫に。

「僕も、貴方の仕事につけますか」竹内はロボに言った。
振り返らず、ただ足をとめてロボは言った。
「なれるさ。でも俺は、幸せにあのひねくれ者の世話をするほうがずっと立派で素敵だと思うがね」

竹内は短い返事をした。

ロボは笑って歩き出す。

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