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恋愛百景(3) /*/ 源は、茂みの中に頭を突っ込んで考え事をしている。 源ですら考え事をしなければならないのだから、世の中は中々難しいのかも知れない。 なんで金城が泣いていたのか、全然分からなかった。 源は金城の機嫌がいい時に聞いてみようと思った。 にわかに茂みが揺れて、源は顔をあげた。 「早かったな。英吏」 痛い痛いと可愛い声を聞いて驚く源。 茂みから出てきたのは髪を乱した柱空歌、だった。 /*/ 柱空歌という女は、金城と比較して全部の性能に劣る女である。 頭が悪く、我慢が苦手で、あがり性で人と話すのがさらに苦手、病気がち、怖いと足がすくむ性質ででいざと言うときは何も出来ないで震えるだけの人物だった。雷電の幼生をかわいがり過ぎて、人を殺したこともある。あれぐらいの巨大な獣になると、じゃれついたつもりでも簡単に死人が出た。彼女はそれを、防ぐことが出来なかったのである。 事件の時も彼女は震えているだけで、何もできはしなかった。この時、業務上過失致死で送検されたが、不起訴になっている。泣いてごめんなさいを言い続ける彼女を見て、軍も匙を投げたようだった。退役もさせずに前線送りで、物事を解決した。 一応、生まれがいいのと実家が金持ちなだけが良いところだったが、もっともこれは、彼女のせいでも努力の結果でもない。 クラスの鼻つまみ者もいいところだったが、源だけは柱を可愛がった。 彼がまともに(殴られたり包帯で首縛られたり、無視されたりせずに)会話の出来る女性は、彼女のみであった。 「く、くーちゃん?」源は驚いた。柱が来るとは、全然思ってはいなかったのである。なんと言っても彼女は怖がりで、倒れた人を見て走って逃げるか誰か連れてくるかくらいしか、源には予想出来なかった。 「げ、源くん、大丈夫?」 髪を茂みにからませたまま、涙目の柱は言った。おたおたしながらからまった髪をどうにかしようとする。痛い音。柱、髪の毛が何本か抜けた。すごい涙目。 「無理に動くから。あー。大丈夫か、泣くなよ。ほら」 「ありがとう」 涙をハンカチで拭く柱。 源は、ふと笑った。金城なら手でごしごししているところだ。金城が見たことのない、それは優しい笑顔だった。 「いいってことよ」 柱は、変になった髪を手で抑えながら、しゃがみこんで縛られている源を助けようとした。 そして失敗した。彼女は斉藤並みに不器用で、ついでに言えば、力も全然なかった。 源、しゃがんでいる柱の脚を見て、あわてて顔を背ける。 「いいって」 「でも」 「すぐ、誰か来るさ。それよかまあ、あー」 「?」 「うち、スカート短いよな」 小さな、あ、という声をあげて、柱は顔を真っ赤にして、片手であわてて布の足りないスカートで脚を隠そうとした。 「ああ、いや……あー。いや、あのな。でなんで片手なの」 「源くんのひも、とってあげたくて」 柱は、一度やりはじめるとすぐ物事を切り替えるほど器用ではなかった。 絶句する源。 「ああ、いや、うん、そうだな。いや……」 なんと言おうか考えて、源は、少し笑った。 「いいんだよ。俺も少し、考え事しててさ」 「ごめんなさい。私……あ、ハサミ持ってくる」 「軍用がハサミで切れるもんか。いいんだ。反省にはちょうどいい」 源がしおらしく言うと柱は、首をかしげた。 「反省?源くんが?」 「おお、俺だって反省くらいすらあ」 「げ、源くんには、似合わないよ。そういうの」 「俺もそう思うんだがな」 微笑む源。 「くーちゃんとは普通に話せるんだけどな」 源がそう言うと柱は顔を真っ赤にして、小さくうなずいてありがとう源くんと言った。 |
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