58 海法復活

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最初に、謎があった。
謎を解いて行くゲームがあった。

それを儀式魔術といった。

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 小夜が、私が翔だったらどうしますかと光太郎に告げる、
その24時間前。アプローと結婚の約束をしてコウタローが散る50時間前。

第二次黄金戦争に突入する最中、アプローの涙と呼ばれる小さな小さな事件で儀式魔術を開始した魔術師がいた。

名前を、海法紀光という。

この物語は一人の魔法使いがついには魔術を使役して魔術師になるまでの逆襲劇である。

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2006年12月18日0時

 海法紀光が寝たのは3時間ほどだった。
しかる後に30分ほどうつつと夢をさまよった後、腕を組んでうなだれた。

彼はゲームというゲームに手を出しているゲーマーであったが、中でも一番、世界の謎と呼ばれるゲームにおいて、優秀とされる存在であった。

ところがアプローの涙の最終日前半の大攻勢で連続失敗してこっち、いささか自信喪失気味である。

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 彼は小説家である。あまり仕事をしない小説家であった。
3年前の新作と今の新作が同じこともある。ありていに言って遅筆であり、ついでに言うと、遅延についていろいろな理由をおもいつく、天才であった。これを号して避け作家という。原稿遅れた理由として世界を救いにいってたんですよと言った人間は、現実では彼だけだろう。もちろんすぐ編集部から出て行けといわれている。

避け作家。

 もとは無名世界観内での物語上の記述であったが、今や現実にも普通に通用するおそるべき称号である。無名世界観というものを良く分らない雑誌社内でも、避け作家の称号は知られている。
「あー、あの先生ですね」というやつであった。

物語は彼を侵食し、ついには現実に力を行使しはじめた。
まずはそう、その称号から。ついでもう一つあるとすれば、彼は物語の中の彼のように、金がないわりに募金をしはじめる。

 ともあれ、物語の中のよけ作家は現実よりかなり有名で、その避けぶりは遠く、わんわん共和国の王宮まで届いていた。ポチ王女は彼のファンである。もっとも実物を見たらファンをやめるだろう。

 先代の海法が真面目なSF作家であったとすれば、こっちは成功要素ラノベ知識をもつ色物系人物だった。
核ミサイル、NEPから食中毒に結婚、当たり作品、馬券、宝くじ。締め切り、包丁、炎熱編集。
彼こそはこの世のすべてから回避出来る、避け作家であり、その称号は伊達ではないと周囲から言われていた。

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 その避け作家は、ついに正解まで避けてしまった。
それで、へこんだ。だがあまりへこむことも出来なかった。
ゲームというものは一戦で全部が決まるものではない。
重要なのは負けが続かないようにすることだと、彼は考えている。

「いつも一度はチャンスがある。二度はない。エース資格も、アイドレスも、Aマホの大規模コースもそうだ。まだ見ぬなにかもそうだろう。全ては対になっている。いきなりエースゲームゲームスタートならその対もあるはずだ」

 魔術師のようにつぶやきながら、海法は考える。
世界は綺麗な法則性をもっている。 ただそれが明かされていないだけの話だ。

余興として開催されている是空を救う逆エースの告知と内容を見て、自分の案の確かさを確認した。設定的な理由は意味はまだ分からない。だが法則性は分る。
世界の謎コースが失敗したのだから世界の謎エースゲームがはじまるだろう。

海法、この日は寒いので暖房をつけて寝ていた。去年の失敗を反省して、今年はちゃんと電気代は事前に払っている。暖房を消して、おそらくは芝村から来るであろう召喚を待つ。
どんな夜中だろうとゲームが始まる時ははじまる。海法はゲーム開始の法則性もまだ解いてない。この方面で分るのは二つだけ。凪の次は嵐が来る。嵐の次は晴天であることだけだ。

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 そもそのこの一年。正確には大絢爛事件終末以降、襲われる→対応するで後手後手にまわり続けている。カウンターアタックでは大勝し、ターニでも善戦したが戦略的にはなんの進展もない。敵の正体も分らず、襲われる→対応するが延々と続いている。
12月の現状でエースの疲弊は限界に近く、普段表舞台に出てこない開発部門のエースまで続々と前線に送り続けられている。NOTエースも似たようなものだろう。
多分、大規模出動に耐えられるのはあと一回。これを越えると是空含む多数のエースが連続チョンボ二回でエース剥奪になり、十分な対応が出来なくなる。

サトルさんはなんと言っていた? あの無限に名前を持つ顔のない人物は。くそ、こんなことならメッセ登録させてもらうべきだった。

そもそもアプローの涙自体が、海法には意味不明だった。
春の段階ではNEXT―GAMEは第二次黄金戦争となっていた。
ではこのゲームは、なんなのだろうか。こんな大規模のフェイクゲームなんてあるのか。
芝村ならやるかも知れない。あの人はあらゆる意味で常軌を逸している。

次がある。近いか、あるは直後か。
海法は一部のファンが嫌な想像と言いながら予想しているのと同じ答えにたどり着いた。
違うのは、その先、ではこのフェイクになんの意味があるのだろうと、考えたことである。

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