55 式神の城コース4 小夜のささやき

 光太郎が目を覚ましたのは、2日後のことである。
魔力の消失は止まっていなかったが、皆は大いに喜んだ。
良い兆しに、思えたのだった。

小夜は、光太郎に近づかせてもらえなかった。
遠くから月子が子供のように泣くのと、ふみこがドイツ語でわめいた後で光太郎の頬を叩いてどこかに走っていったところを見ただけだった。

 それで小夜は隠れて、光太郎の寝所に入った。
光太郎が寝ているのでがっかりしたが、その枕元で正座して、触ることもなく光太郎の寝顔を見た。随分痩せているように思えた。

涙が出る。顔を両手で隠し
「ごめんなさい……。ごめんなさい」
とつぶやいた。

目を覚ます光太郎。いつか、光太郎が泣いて小夜が目覚めたように、小夜が泣いて、今度は光太郎が目覚めた。
「なんで泣いているんだよ?」
光太郎はささやくように言った。

「私が呪いをとめられなくて……光太郎さんがいなくなったら私……」
「呪いじゃねえよ。だいたいおっちゃんは善神だ。たぶんな」
光太郎は微笑んだ後、天井を見ながら、小さく言った。大声で何かを言う元気はなかった。
「夢を見てたよ。ずっと昔、仲のいい女の子がいたんだ」
小夜の瞳孔が、大きくなる。

「兄貴の野郎、俺に魔術かけてたんだな。魔法が本来きかない俺に聞くくらい、強い奴をさ。一体どれだけ俺は護られていたんだろうなぁ」

また知らない女の人だと、小夜は思った。
また涙が出る。微笑む光太郎。
「大丈夫、死にはしないよ」
壊れた魔道兵器のように、小夜は泣いた。
優しく優しく、小夜の髪にふれて、優しく言う光太郎。
「泣くなって。いやまあ、泣いてるのもかわいいけどさ」
そして微笑んで言った。
「翔もそれくらい可愛げがあったら、俺、もっと素直に謝ることができたかな。それだったら俺は……」
光太郎、また眠りに落ちそうになる。悪い気分ではなかった。眠れば兄を見ることが出来たから。
「俺は……?」小夜は言った。
夢見心地で、光太郎は言った。
「初恋だったのかなぁ。はは。ちょっと小夜たんに似てたかも」

下を向いて考える小夜。長い時間。光太郎はいい気持ちで、眠りに落ちようとしている。
小夜は、震えながら口を開いた。
「私が翔だったら……どうしますか?」

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