番外 戦闘詳報 Aの魔法陣による大規模作戦(1)

 アプローの涙が終末に向かう、一方そのころ、第5世界、広島ではすでに次なる戦いが始まろうとしていた。

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 勢力に空白を作るな。
それが万古における政治、兵理の鉄則である。
空白があると、その空白を埋める形でなんらかの戦力が伸長してしまうからである。それがフレンドリーならまだしも、敵対的であれば手がつけられない事態になることも往々にある。

 この鉄則は世界で覇を唱えたイギリス由来のものであり、以降の歴史が見るところ、ことごとくがこの鉄則の正しさを証明している。良い意味でも、悪い意味でも、そうだ。

これは、ネットでも第5世界でも、同じであった。

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 小太刀戦車長と砲手加納と74式改(清子さん2)が主砲を振り回してとして勇戦した結果、聖銃とその破片は吹き飛んだ。

 同時に、この戦いを観戦した幻獣を率いるクーラは粋な計らいをした。
兵を退いて広島を征服するのをやめたのである。それが彼なりの、右も左を分らぬながら大砲ぶっ放して国土を護れと言った小太りの男と旧式戦車に対する敬意だったかも知れぬ。

結果だけで言えば一日で広大な地域の権力の空白が生まれた。
第5世界の軍令部はこの空白を埋めるために兵力を派出、空白地帯をうめて、できればそこを陣地化しようと考えた。彼ら自身は敵を信用していなかったし、はいそうですかで戦争を終わらせられるほど、めでたくもなかった。

以上はアプローの涙とは全然関係ない事情による極普通の戦力展開であり、だから普通は、この手の展開は大規模ゲーム化されることはないはずであった。

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 美津野涼子率いる混成大隊が進出したのは三次市のある十字路である。
西には運動公園があり、北部には自動車会社の施設があった。

美津野涼子の率いる大隊は、定員割れして167名である。
とは言え重装備が多く、平均的な大隊よりは火力が強いということで前日の戦いで勇戦したながみ迫撃砲隊、サターン偵察隊などを加えて単独で送り出されたのである。

遅れがちで数の少ない砲兵がいない分だけ火力は弱かったが、偵察任務には耐えられるだろうと上は考えていたのである。
命令は、偵察と出来るかぎりの失地回復。絶対勝てるなら戦え、そうでないなら逃げろという、はなはだ腰の引けた命令だった。もっとも戦場の女王である砲兵の支援がない部隊に、正面戦闘は無理だから、これはこれで、正しい命令ではある。

 命令を受領した方、美津野涼子は、指揮をあんまりやったことがない。正確には、全然なかった。
どちらかというと口をあけてぼーとするのが好きな女ではあった。
実質、この大隊を支えるのはこわもてぞろいの第1中隊から第5中隊までの中隊長であり、彼らはまともな地図もないのかとののしりながら、部下を率いることになる。

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「偵察しましょう、そうしましょう」
美津野涼子の命令に従い、最初に小手調べで第1偵察中隊の古河は兵力を送った。
片方は詩歌の山岳騎兵隊であり、片方は偵察で名高い、サターン小隊であった。
予定では、この後どんどん偵察部隊を送り出すことになっている。

そして、失敗した。

部隊の展開は、遅れに遅れた。上から下まではじめてのゲームシステムということもあり、集計を中心に多大な遅れが出た。
ついでに道を中心に交通渋滞も始まって、大隊は大変なことになっている。

結局、偵察中隊だけでは手が足りない(ついでに暇している部下に仕事をやろうと)と、第三、第四中隊が地形障害が少ない(そして敵がいる可能性が低い)左翼に展開を開始、2km近くにわたって兵力を展開してローラー作戦を行うことになった。

正面(北部)は本業の偵察部隊が、左翼(西部)は歩兵部隊が展開する。
地図が少しづつ分かったが、同時に時間も、刻々と過ぎていった。

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 力の空白は無名世界観の場合、即座に同一存在を生み出すことで埋められる。
このメカニズムを利用して、今だ知られていない第四の世界移動方式を使って移動した一団があった。

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 大隊は、ようやく方法論を掴んだ第1中隊のサターン小隊と詩歌小隊によって埋められた。古河はそれ以外の小隊を出して展開するようなことをせず、いつでも先発する両小隊に増援を出せるよう、後ろから追跡させていた。
広い左翼を友軍が展開してカバーした結果、狭正面に戦力を集中出来たのである。

そして30分しないうちに敵発見の報を受けた。
敵を見つけたのはサターンである。

あの人いつも敵みつけているよねえと大隊長の言葉に全員(SDも)笑った後、各中隊長は慌てて敵戦力の分析と移動にはいることになる。

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 各中隊のうち、正面戦闘可能な第二、第四中隊が道沿いに動き始めた。今だ戦闘は小手調べ、先発隊が通った道を移動するだけである。
 一方、左翼に展開していた第三、第四の両中隊はこれまた集計にてこずりながらサターン隊の情報をもとに左翼から北上する形で移動開始、第三中隊のニンジャはアシタスナオ小隊を選んで急いで北進させ、サターン小隊と合流させることにした。

 サターン小隊のカバーに出たのは本隊である第1中隊も同じであった。
今だ、後追いだけだったぷーとら小隊、続いて中隊直轄の結城班を増派、支援を行う。

サターン小隊は奇襲を回避、新システムは慣れてない上に頭にきていることもあって全火力を投入して、敵を撃ってこれを一旦は後退させた。そして10分で弾切れして大変なことになりはじめた。
敵は増援を得て、再反撃に出始めたのである。

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