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zoom RSS アザント討伐戦外伝 赤鮭・香川救出篇(2)

<<   作成日時 : 2006/12/01 12:32   >>

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 それは、沈黙の神話である。
決して誰にも語られず、また信じられることのない神話である。
それは目前で見ても翌日には嘘だと言われるものである。

それはあまりにも現実離れをしすぎていて、だからみんな、大人になると忘れてしまうのだった。

だからそれは、子供のころのお伽話であり、今、目の前に起きるのは、その再誕であった。

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 死ぬ。

と目をつぶった香川優斗を誰かが護っていた。
再び目を開けて、そして全開にして見たのは、一体の甲殻型ウォードレスが身を挺して護る姿だった。

 爆発するウォードレス。脱出するパイロット。
被弾にいたく慣れているのか、悠々と優斗の腰を抱いて、余裕で脱出して見せた。

「たくさんの人が死んで、我々が来る180秒を稼ぎ出した。君は感謝するべきだよ」

「誰だって顔だね。そう……」
優斗を抱きながら男は言った。
「絶望の天敵。……を名乗るただの人間だ」
にこやかな顔で角ばった顔の男が言った。その笑顔さえなければ、次の瞬間には忘れてしまうような顔だった。

「カレンとも名乗るがね。おばかさん」
優斗をバカ呼ばわりして、その男は静かに言った。着地し、動く。
その動きはそつがなく、中々にして勇敢だった。
「どうしても、勝たなきゃいけないんだろ?」

壊れて動かなくなったウォードレス・ルブランの残骸に取り付いてその腕をリモート操作して射撃を再開しながらカレンは言った。機体が壊れたくらいは、なんの影響もないという風に。
それは皺深いし渋い顔をしていたが、前だけを見て生きていた人間の香りがした。

「だったらあきらめなさんな。あきらめるのだけはいつでも出来る。たぶん、死んだ後にでもな」

カレンはそう言った後、化け物となった岩崎であったものを見上げながら言った。
「人の心には翼があって、想いだけなら自由にどこにでもいける。人の心には銀の剣があって、どんな問題も切り裂くことが出来る。人がそれをなそうと努力する限り、あきらめることなく前を向く限り」

そして優しく優斗に言った。
「世界連続体に存在する敵を倒すことが出来るのは複数の世界に同時介入できる力だけだ」
「大丈夫。坊やは使えるんだろう?」
優斗がうなずくと、カレンはにこやかに笑って見せた。
「OK。それでいこう」

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 連続する爆発。
カタナと呼ばれるその男が、通路を連続爆破していた。

爆発と崩落の中からロボ、赤鮭を担いだオキュが姿を現し、ここに4人のオデッセイアが揃うことになる。

「間に合ったか」オキュ。
「まあまあかな」カレン。
「戦力分析はできた。分断も」カタナ。

「敵Bは到着まで2ターン」ロボ。
「ぎりぎりだな」オキュ。
「そんなもんさ。いつだって」カレン。
「では集合したところで、連続各個撃破を開始しようや」カタナ。

4人は華麗に反転して戦闘を開始した。分断と各個撃破こそはいくつものいくつもの戦いの中でこの人物達が見せることになる、ただの人間の努力の結果であった。

彼我の戦力差30万対1が15万対1になる。
それが、戦いのはじまりであった。

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 火力線を集中し、その攻撃を縫うように死角から接近したオキュの肉弾戦が開始される。
関節技こそは王者の技よと言うオキュは、文句なく岩崎だったものの無数の手と腕を次々と叩き折ってあるいはその打撃を回避して、全弾正面突破してその顔に拳骨を叩き込んだ。

「さすが関節博士(ミッションスペシャリスト)」
「おお!任せろ」

死角をなくすために目を無数に増やし始める岩崎だったもの。
関節を護るために肉を増やし始める岩崎だったもの。

どんどん異形になっていく”それ”から目を逸らそうとする優斗に、カレンは目を逸らすなと言った。出番は、もうすぐだと。

それは神話の再誕である。

岩崎だったものはいくつもの死体を吸収しながら膨れ上がっていた。どんどん、どんどん。その大きさは既に横幅で10mある通路一杯になっており、さらに膨れ上がろうとしていた。

「そう、食べていくしかないよな」
同情するようにオキュは言った。長い指先を突きいれ、今度は目を潰し始めるオキュ。
関節を護るために肉を増やした腕は良く曲がらず、容易にオキュは攻撃を回避して見せた。

「だが弱点が増えているぞ。ぼうや」
オキュは、流れるように目に突っ込んだ手をさらに伸ばして、神経をちぎり、内臓を引き出しながら、静かに言葉を続けて言った。

「無限のハード的進化で最強にはなれない」
盛大に血を浴びながら言うオキュ。
「最強ってのは無限の悩みやとまどいを重ねて鍛えあがる苦いものだ。それは噛めば涙の味がする」
カタナ特製の爆弾を埋めて、オキュは後ろに飛んだ。
スイッチを捻るカタナ。
「お前の最強は涙の味がしない偽物だ」

爆発が起きる。

「いけよ、優斗。最もあたらしい、俺たちの弟。精霊手なら、助けられるはずだ」
カレンはそう言って優斗を送り出した。
走る優斗にはもう全ての興味をなくしたように4人は振り向いた。
航だったものが壁を突き崩しながら現れる。

帽子から小さく見える薄目をあけて遠い未来を見るロボの瞳のその全体が青く青く輝き始めた。
その輝きは豪華絢爛なるものにして、それはロボが生まれる前からずっとそうであったように、絶望の天敵として闊歩をはじめていた。

「山口さん家の子供たちの依頼はかなったな。次は白馬くんの依頼だ」
ロボはそう言うと、マーカーガンを向けて航だったものに言った。
「覚えておきたまえ。我々は万能の代理を徴募せし物言わぬ機構から選ばれた、ただの人間。全ての終わりの最大の敵」

マーカーガンを捨てた。
「だからこんなものは何の問題にもならないし」
ネクタイも捨てた。
「だから戦力比など何の意味もない」
袖をまくりあげた。ただの人間が鍛え上げた、太い腕が見えた。

「遊びは終わりだ」
帽子を華麗に脱ぎ捨てて、怒れる四人の男は言った。
「最強ってのは子供を抱いた母親のことだ。それを信じて疑っていない、我々の事だ。これから、子供達の眠りを守るのはただの大人の努力であることをこれから存分に見せつけてやる」

四人は次の30秒で航だったものを完膚なきまでに叩き潰し、ついに一つの絶技すら使うこともなく完勝して見せた。

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