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zoom RSS リターントゥ神々の宴(26)

<<   作成日時 : 2006/11/30 00:47   >>

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「これからどうされる?」
まだ消えぬ炎の中で、壬生谷志功はたたずむ英太郎にそう言った。

「何も」
そう答えた後で、もう少し考え、そして口を開く英太郎。
「何もしない。後、どれだけ生きられるか分からんが、静かに生きるさ」
「人間のようなことを」
英太郎は何も答えなかった。仕事の上と思っていたし、戦術上正しいとも思っていたが、民間人を巻き込むのは、やりきれなかった。久しく忘れていた、感覚だった。

民衆を護れ。 石塚さん。僕は何をやっているんでしょうね……

無性に孫に会いたくて仕方なかった。英太郎は、顔をあげて言った。
「この先にまだ生きている少女がいるそうだ。わしはそれを連れて家に帰ろうと思う」
「何ゆえに?」尋ねる志功。
「もう、随分死んだ」
英太郎は疲れていた。疲れて疲れて、しようがなかった。
「それが理由ではいかんか?」
「勝つためです」
英太郎は義手で志功の頭を粉々にする自分を想像したが、想像しただけに止めた。
それで何も言わず、歩き出す。
その背に叫ぶように話しかける志功。
「我々には魔力がない。魔法はどんどん、消えていく。だから……」
立ち止まって肩越しに後ろを見て口を開く
「だからと言って正義まで消えたわけではあるまい。わしは、それを忘れていたようだ。孫にはしっかり教えてやることにしよう。わしが今後悔しているような、そんなことのないようにな」

「他に方法があったとでも?」志功はそう言った。
「なかった。それはよく、知っている。だが壬生谷殿、あの哀れな火車もそう言っていたのだぞ」

今度黙るのは、志功のほうだった。
何か言い返そうとしたか、志功ははじめて人間のように顔をゆがめ、その後で、英太郎を追うように歩き出した。

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 5m離れた二人の移動は、一度の跳躍を挟んでさして長くもない距離の間、続いた。
破壊された車の間に、少年と見まごう少女が倒れている。
その周囲には、彼女の家族らしいものが集められ、黒い上着をかけられていた。

「見るがいい、壬生谷殿。そして覚えておかれるがよかろう」
広げた手で惨状をさして英太郎は言った。
「我々の正しい戦術の結果を」

手を伸ばした死体から魔力を感じ、志功はそこで、大声をあげて涙を流した。魔力を持たぬ人間にも神をうやまうことのない人間も、ついでに言えば外国人も嫌いな志功だったが、だがそれでも彼は国も民も愛してはいた。

火力が足りずに炭化もせずに体液が流れる気持ちの悪い有様となった焼死体の手を握り、志功はすみませぬ、すみませぬと泣きながら言った。

英太郎はこの涙で、この日幾度目かで、そして最大の過ちを犯すことになる。自分の普遍的と言って良い正義から来る悲しみと、志功のごく狭い身内範囲の悲しみを、混同した。

だから少女を抱いて光太郎の所へ帰ろうとする英太郎の足にすがりつくように志功が呼び止め、お願いがございまする、その少女を、私にお預けくださいと言った時、その志功の涙に免じて、分かったと言った。言ってしまった。

そして相田翔だったものは、光太郎と運命を分かつ事になる。

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