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zoom RSS リターントゥ神々の宴(25)

<<   作成日時 : 2006/11/25 09:03   >>

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 雨が、降っていた。
男の黄金としかいえない金髪が、雨に濡れて輝いていた。
目の前の崩落した高速道路を見、その先に目をやる。
千葉昇を見ずにロイ・バウマンは腕を伸ばし、指を二本立て呪文の詠唱を始める。

「黒よ、黒にして黒たる我らの王、偉大なる暗黒、疾風なるもの、黒にして真珠たる我は計画の変更を要請する。そは悲しみを砕く黒の一撃。禁断を越えて振るわれる風の一撃」

配下のリューン10万を駆使し、ロイは同盟関係にある神を呼び出した。それは災神にも関わらず、江戸では古くから災神ではないとされた、優しくもある神だった。

「完成せよ! 風神の激」
 ギリシアでは北風の神と知られる風神が100年ぶりに現れて、なんとも愛嬌のある丸い顔に笑みを浮かべ、その風がつまる袋を、マントのひもを少しだけ緩めた。
そうして風を吹かせた。冷たくも厳しくもあるがどんな雷雲も一撃で吹き飛ばす、そんな風だった。

 何もかも砕く雷雲が押し返され、吹き飛ばされる。

火車を葬った英太郎は目を細め、風神が微笑んで姿を消す姿を見た。
火の出る間は風を吹かさなかったのが、この神の愛だと英太郎は思いたかった。

 はるか遠く、崩落した高速道路を挟んで黒服のロイと英太郎が立っている。

ロイは何を言おうか、どう言おうか逡巡した後、結局泣かないように泣かないようにと己に念じながら口を開いた。

「少女が一人、まだ生きている。魔術に侵されているが」大声で言うロイ。
「後深慮に感謝する。帝車を守る方」英太郎は、心のむなしさを消して言った。火車は、自殺もいいところだった。実際自殺だったのだろう。冬眠した末の死より、一瞬でも神として正しく振舞って死にたかったのに違いない。
火車の行動は魔術師である英太郎の思いでもあった。自分が時折思うことを、実際にやった者がいた。そう思うと、英太郎は無性に泣きたかった。妻がまだ生きていれば、胸に顔をうずめ、おいおいと泣いていただろう。

「すぐ救出を行いたい」英太郎は、良く通る声でいった。心の中で泣きながら。
「そうしてくれ。奇跡のような確率で、生き残ったのだ。事件がおきたのは神意だが、ここで彼女が生き残るかは人の心がけによるものだ」ロイも、心の中で泣きながらそう言った。なにもかもが懐かしく、ロイはこの空間を飛び越えて、英太郎を抱きしめたかった。
「承知した。重ねて感謝を」英太郎。
「不要。感謝するならば風神にされたし」ロイは大声でいい、その後で10秒待った後、少しだけ規律に反した。

「ただ、もし、貴方が弟子を取ることがあったのなら、神通力の訓練がうまくいかなくても、才能がないとか言わないで頂きたい。きっと、ずっと気にすると思うから」
そう言って、英太郎を見た。瞼の裏に焼き付けようと。
「承知した」英太郎は意味は分からなかったが、確かにうなずいた。

ロイは、それ以上何も言わず、ただ会釈して姿を消した。

長い夜が、明けようとしていた。

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