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zoom RSS リターントゥ神々の宴(22)

<<   作成日時 : 2006/11/09 02:14   >>

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 その日、その時刻、相田家は家族旅行で車の中にあった。
陽気な父は嫌な予感がする娘二人がとめるのを優しく笑って無視して、車を高速道路に乗せている。

「今日は空いているな。大ラッキーだ。やっぱり幸運の女神が3人もついていると違うな」
父はそう言いながらハンドルを切る。定時きっかりに会社から帰ったところで次女にして末娘の翔がひどく落ち込んでいて、それをひどく、心配していた。だからこの時はことさら陽気に話している。

幸運の女神とは、二人の娘と妻のことである。会社的には冴えない父で、それを気にしてもいたが、仕事がうまくいかないことへのあてつけか逃避か、家族のことを良く自慢した。自分は母さんに出会った時からラッキーばっかりだ。娘が生まれてからはなおさらだと、年がら年中言っているような人物である。

「だからなあ」
どのへんがだからなあなのか、本人でもよくわかってなさそうな口調で父は言った。
「翔、元気だせ」

そしてそれが、臨終の言葉になった。
次の瞬間には火車に追い越され、この際に下顎から上を吹き飛ばされている。

後部座席で行儀悪く膝を抱えていた、そして光太郎のことばかりを考えていた翔は、母の悲鳴で我に返った。生まれつき魔法が極度にかかりやすかった体質のせいか、気持ちはまだ凍り付いたままで、だからか、父の下顎に張り付いた舌が風でばたばたはためいて遥か後ろに飛んでいく様を、冷静に見ていた。見て、しまっていた。

 車がスピンする。
防音壁にぶつかり、車はバウンド、中央分離帯に戻ったところで顛倒して別の車両にぶつかって炎上した。

母はこの時に死亡。もとより火車に片側を破壊されていた前席は完全に潰れてしまっている。

続く炎上で翔も死ぬはずだった。だが、この時点では生きていた翔の姉のみなおが、これを阻止した。車がスピンした時点で妹を守って抱きしめていて、炎上の段階でひしゃげた後席の窓から妹を押し出していたのである。

生きながら焼かれて苦しそうに動く手を、翔は呆然と見ている。なんの感動もなかった。
衝撃と爆発音で耳が馬鹿になっていて、姉の断末魔の声も叫びも、聞こえていない。

お姉ちゃん。と、なんの感情の動きもないまま、そのまま、黒焦げになって皮膚がめくれ下のピンク色の組織があらわになった姉の手に、炎の中に向かって呆然と歩いた翔は、そこで黒服、眼鏡の長身の男に後ろから腕を引かれ、身を倒すことなる。

 千葉昇、だった。何が面白くないのか喚いていたが、翔の耳には、聞こえてない。
同じく黒衣の金髪の青年が手を伸ばして爆発による熱気と爆風を防いだことを、呆然と見ただけだった。顔を見せないようにして背のほうにある翔を気遣う金髪の青年。

翔は金髪じゃなくて黒い髪の、光太郎だったらよかったのにと思った後、猛烈に現実感を取り戻して、嘔吐した。肉と髪の焼ける匂いが、鼻につき、凍りついた心とは関係ないところで身体を突き動かした。

昇は翔の嘔吐物をかけられたが、少しだけ嫌な顔をしただけだった。手は優しく翔の首筋に伸びる。

衝撃。

そして翔の人生は、それで、終わってしまった。

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