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zoom RSS リターントゥ神々の宴(20)

<<   作成日時 : 2006/11/03 06:34   >>

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 晋太郎は千葉昇の事を伝えるために祖父に念を送ると、目許も鋭く歩き出した。
歩く途中で精神を落ち着かせ、優しい、誰もが知る晋太郎の表情になる。
その精神力は尋常ではない。彼は病から来る平時の痛みにも耐えて、優しい晋太郎であり続けることが出来た。

 相田みなおを見つけ、また一緒に歩き始める。
祖父から念が届く。光太郎は祖父の家に。晋太郎は行き違いかと苦笑したが、とりあえずはみなおと歩いた。

「相田さん、そう言えば、鳴沢さんは?」
「義姉さんが退院するんだって」
「そうなんだ」

 二人は小学校までの道を急いだ。

保健室へ。そこで二人は今までになくひどく落ち込んでいる翔を見ることになる。
ベッドから身を起こし、下を向いて石のように固まっている妹を見て、みなおは晋太郎と顔を見合わせた後、あわてて妹の肩をゆさぶった。

「翔ちゃん、翔ちゃん!」
反応はない。いや、翔から涙がこぼれて、筋を作った。
参ったなと苦笑して思う晋太郎。女性の涙には弱いというか、どうしていいか分からない晋太郎だった。魔術も学校も、こう言うときの良い対処法を教えてくれはしない。

それでも晋太郎はうまくやろうとした。つまりはよく見て、涙が痛みによるものではないということを理解した。ならば心の問題であろう。

まいったな。ますます専門外だと思う、晋太郎。
心を消すのが魔術の根幹だった。人間くさいとは、随分違う。

「死にたい……」
つぶやく翔に、何馬鹿な事を言ってるのよと声を荒げるみなお。普段大人しいみなおまで取り乱したらおさまるものもおさまらないと、晋太郎は少しだけ苦笑して、このあたりでも僅かなはずの魔力を使って、魔法をかけることにした。

「相田さん」
「翔……え、はい」
「ちょっとごめんね。ええと翔くん」
「私は女だっ」よほど気になることだったか、翔は顔をあげて晋太郎に言った。
「あ、ああ。ごめんごめん。えーと」
翔の視線を誘導するように指を簡単に動かす晋太郎。口を開いた。
「心は凍る」

翔の瞳の中から生気が消える。これでよし。とりあえず満足する晋太郎。
本来は魔術訓練用の初歩的な術だったが、多くの魔術がそうであるように、相手が取り乱している場合などには、良く効いた。落とす、という。

効果はわずかな時間だが、その間に荒れ狂う気分が落ち着くはずだった。

びっくりするみなおを安心させるように微笑んで、翔に口開く晋太郎。
「体調は、大丈夫?」
「はい」
「気分は?」
「良好です」
晋太郎は満足した。みなおのほうを見て、妹さんは病気とかじゃなくて、あんまり良くない思い出があったみたいだねと、言った。

「晋太郎君、今、何を……」動揺しているみなおに微笑む晋太郎。
「気分を落ちつかせる催眠術だよ。ちょっとした魔法みたいでしょ?」
晋太郎はそう嘘を言うと、祖父の真似をして、知見を述べた。
「大人から見たら、そんなに大変なことじゃないと思う。気分転換したほうがいいよ。さっき話していた家族旅行とか、きっといいと思うよ」

晋太郎は自らのその言葉を、長く呪うことになる。

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