リターントゥ神々の宴(18)

 月子はあわてて跳び起きた。
コウに寝ているとこを見られるのが恥ずかしかったし、それにコウは、泣いていた。
疲れているなどと言っていられない。

月子の心の中の泉から元気が沸き上がり始めた。
後の後の後までも、月子が光太郎をかばって死ぬその時まで、月子は光太郎が元気を無くすたびにそれを守るために深く意識することもなくほぼ自動的に己を奮い立たせた。はたから見れば光太郎が元気を無くすたびに月子が元気になるように見えた。

それは嘘ではない。空元気も元気とするなら、その通りである。
事実はこうだ。月子はふらつきそうな足を彼女のコウが泣いているという事実だけで押さえ込んだ。しっかり歩いて、縁側からコウを抱きしめた。幼い抱擁だった。
コウは泣き止もうとして失敗した。大泣きした。

「やれやれ、わしの孫はなんとも弱虫じゃな」
そう言って笑ったのは見舞いから帰って支度をしていた英太郎である。
月子が光太郎を守るように抱きしめているのがなんとも微笑ましく、英太郎は素直なのは魔術師向きだが、どうにもこう、感情の起伏が激しくてはなぁと、笑った。

光太郎の兄、晋太郎と同じように、魔術師とは全然関係ない次元で英太郎は孫を可愛がっている。

 英太郎は歌も歌わず、手も叩かず、即ち魔術を使わずに問題に対処した。
つまり戸棚にしまってあったおやつを取り出し、光太郎と月子に、持っていってやった。

「じいちゃん……」月子にしがみつかれたような格好の光太郎は言った。
「なにが悲しいか分らんが、妹に心配されてどうする?」英太郎は、祖父として言った。
泣いている光太郎、うなずく。
英太郎は笑顔になると、
「生命というものは偉大なものだ。ゆめゆめ、簡単に殺してはならぬな」
と言った。
光太郎と月子は、ならんで饅頭を食いながら不思議そうな表情。
英太郎はしわ深く笑った。顔を動かした。

「御免、阿殿はおられるか?」玄関からの声。
「じいちゃん、阿ってなに?」
光太郎がそう尋ねると、英太郎は目を上に向けながら口を開いた。
「わしのペンネームだよ」
「裕子じゃなくて?」
「大人には色々あるんじゃ、……おお、おるぞ。その声は壬生谷殿か」

玄関先に立っていたのは、山伏のような身なりの男だった。

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