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zoom RSS リターントゥ神々の宴(15)

<<   作成日時 : 2006/10/06 20:45   >>

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 光太郎が翔を見る表情は、険しかった。心配で顔が、こわばっていた。
翔はその表情を見た瞬間、今までの葛藤全部綺麗に投げ捨てて機嫌を直した。褒められた時の子犬並みのすばやい反応であった。年齢相応と言って良かろう。光太郎も幼かったが、翔もまた、同じくらいには幼かった。

「大丈夫?」
「だ、大丈夫」
 光太郎の質問にそう答えた後、顔を赤くして視線をそらす翔。いつもみたいに背中を叩いて心配性だなぁとは、言えなかった。もっと心配してもらいたかった。

だが口に出したのは、全然別のことである。

「今何時?」
「学校終わったところ」

光太郎は翔のかばんを持ってきていた。ぴよぴよと2匹のヒヨコが描かれた、地味な布製の手さげ鞄である。翔は鞄を見ると、そ、そうかと言った。

顔を背けてばっかりじゃ気付かれると思ったが、急に直視できなくなってしまった翔だった。

「なあ」
光太郎の言葉を聞き逃し、え、なに?と言う翔。

「なんでお前のかばんの中に俺の写真が入っているの?」

翔、発作的に光太郎の頬にパンチ。いつもの調子は簡単に戻った。
「他人の鞄を勝手にあけるな!」怒鳴る翔。
「開いてたし」いってえと言いながら、光太郎。
顔を赤くしながら、文句言う翔。
「中身勝手に見るな!」
「見えたんだからしょうがないだろ」憮然とする光太郎。世の中は理不尽だと、思った。
「しょうがなくない……よくない」鞄を抱きしめてなんか泣きそうな翔。
光太郎は翔の様子を見て、光太郎なりに、傷ついた。悪いことをしたと思った。
「分かった。じゃあもう絶対見ない。一生」
そう言った。

「そんなこと言ってないだろ」
鞄を抱いたまま小さい声で言う翔。
「じゃあどうすればいいってんだよ!」
キレる光太郎。彼の父親なみの理不尽さを発揮する翔の言動に腹を立てた。光太郎は生まれてこっち、父親とは馬があったことがない。父親に触られるのも、激しく嫌がった。父親は父親でいつまでもなつかない我が子につらくあたっていた。光太郎は優しい兄がいなければ、もうずっと前に性格だか精神だかがおかしくなっていたろう。
光太郎が激しく反応したのは、翔に、というよりも、そこから連想されるものに対してだった。

 翔は光太郎に大声だされて泣くか、怒るか瞬間だけ顔を曇らせたあと、なんでこうなるんだと思いながら光太郎にバカ、バカと言い出した。だからお前はバカなんだ。なんにも考えないから。人の気持ちなんか考えたりしないから。

「バカのほうがかわいいよって兄ちゃん言うもん」光太郎がそう言うと、翔は晋太郎にまで嫉妬して、そっぽ向いた。胸をそらす。
「はん。そこがバカって言うのよ。バーカ。あんたすぐ騙されるのよ。バカでもいいとか仕事忙しいからとか、そんなのみんなウソばっかり。あんたがそんなだから、あんたは家族旅行にもいったことないのよ。いい?私は明日から家族旅行なのよ。普通はみんなそうなのよ。ゴールデンウィークだから」
翔の意地悪な言葉にじっと耳を傾けた後、光太郎は翔を殴るか、どうか考えた。
腹が立ちすぎるとかえって冷静になる人間もいる。光太郎は、そうだった。
震える拳を、記憶の中の兄がそっと止めた。ほっとけばいいんだよと、そう言った。
うん。と心の中でうなずく光太郎。それで翔を見て、口を開いた。
「元気そうでよかった。じゃ」

歩いて去っていく光太郎。

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