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zoom RSS リターントゥ神々の宴(12)

<<   作成日時 : 2006/09/17 01:27   >>

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 1時間の後、光太郎は祖父、月子と一緒に祖父の家に戻った。
いつまでも遊びたいが、公園の傍で住むじいさんは、7時を過ぎるとすぐにこらぁと怒鳴るし、祖父は何も言わない人であったが、光太郎としては兄晋太郎と学校に行きたいという気分もあった。ついでに相田翔に月子を紹介したくもある。自分と仲の良い翔なら、月子とも仲が良くなるはずだと思っていた。

 祖父の家ではぴよぴよエプロン姿の晋太郎が料理を作って待っていた。
この人物、光太郎の身の回りのものは何でも作ってしまう人物である。実際、光太郎の着るシャツやトレーナーは晋太郎が自分の着ていたものを仕立て直していた。料理は当然ながら晋太郎が光太郎のために作る第一のものであり、後の光太郎の化学調味料嫌いは、晋太郎の影響によるところがかなり大きい。

 その日の朝食はだし巻き卵、豆腐とあげ、大根の味噌汁、秋刀魚の塩焼き大根おろし付、きゅうりと大根の一夜漬け、手製の焼き豚を少し、ご飯は晋太郎が鍋で炊いたコシヒカリであり、晋太郎は料理によって数種の米を使い分け、どうかするとふるいにかけて餞別して炊き上げていた。味噌汁、塩焼き、一夜漬けと大活躍の大根は晋太郎が練馬まで行って畑で厳選したものであった。醤油は熊本県産の甘く、濃厚なものであり、秋刀魚にふりかけられた大粒の塩は英太郎が好む小笠原の手作りのものだった。晋太郎という人物の凄みはこの種の地味で手抜きが簡単に出来るところで世界一といっても良いこだわりと熱心さで取り組むところにあった。ようするに魔術師ではない時の晋太郎はまめであり、途方もなく日常的であり、そうして愛情深かった。

 純和風の食卓である。
料理も米もうまいせいで会話少なく、わずかに英太郎がただ食事前に読んでいた新聞を一瞥して、見舞いに行くかとだけ言っただけだった。
晋太郎は光太郎と月子の世話をしながら誰より早く食べるという芸当をやってのけており、勢いがありすぎて音を立てる箸と食器の音を聞きながらほら、ゆっくりと呪文のように言った。

月子のいる前で光太郎を着替えさせる晋太郎。月子が走って逃げる意味を考え、少し照れた。景気良く朝食を食べ終わった光太郎は不思議そう。兄ちゃんいこうと晋太郎に連れられて元気よく登校した。月子と祖父に手を振るのは忘れなかった。

光太郎、上機嫌である。

晋太郎は微笑んで登校する。すれ違いに、神奈川にいるはずの怜悧と言ってもいい眼鏡の高校生とその妹を見たような気もしたが、晋太郎はこれを無視した。

「月子ちゃんと仲良くなったみたいだね」晋太郎はことさら明るく言った。
「うん」大きくうなずく光太郎。
「月子ちゃんのこと好き?」
「うん」
今まで見た笑顔の中でも最高クラスの笑顔を見た晋太郎は、同じくらい笑って見せると弟を学校に送り出した。うーん。どこか寂しいのはいけないなあと思いつつ、自分に近づいてくる同級生、鳴沢清美と相田みなおに気付いて微笑んでみせる。

「相田さんも妹送ってきたんだ」
見られたのが恥ずかしかったのか、全力で逃げていく翔を見ながら晋太郎は言った。
「う、うん……最近物騒だから」
縮こまるように下を見て口を開くみなお。
「そうだよね」
と晋太郎はいい、二人に一緒に学校に行こうかと言った。
顔を見合わせてほらと笑う二人。晋太郎は弟の無事を祈ると、学校に向かってゆっくりと歩き出した。

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