電網適応アイドレスSystem4

アクセスカウンタ

zoom RSS リターントゥ神々の宴(10)

<<   作成日時 : 2006/09/12 00:28   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

/*/
第1話
/*/

1999年4月27日。

 夜の大東京市に広がる影は、ネオンが明るく輝くほど暗くなり、光射さぬところの 闇を濃くしていた。

 遠くから明かりが一つづつ消えていく首都高速道路。
全面通行止めとなったその中で、軍服姿の魔女、ふみこは箒を一本だけもって立っていた。
その前方50mには車止めと対車両地雷がばら撒かれており、この他数名の骸骨兵からなる機関銃手が配置されていた。

 簡易パックフロントね。ふみこはため息。全然魔術的でも戦争でも典雅でもないと思う。とはいえ、血はそれなり騒いだ。安い女ねと心の中だけで自分を笑った。

春風に、編んでない前髪がゆれる。春風だったが、この東京では春風もあまり心地よいものとはいえなかった。魔法の力がどんどん失われている昨今ではなおのことそうだ。

「来ます」
万能執事ミュンヒハウゼンが銀髪を額に一筋垂らし、耳を澄ますために目をつぶったまま言った。

薄くうなずくふみこ。

眼鏡のつるをもちあげ、眼鏡をかけなおすと片手を軽くあげる。
遠い炎の光。廻りながら迫ってくる。

「ファイエル」手を下ろしながら口を開くふみこ。
4丁のMG42機関銃が一斉に火を噴いた。

次の瞬間に爆風があたりを襲い、そしてなにもかも、見えなくなった。

/*/

翌日の朝。

 光太郎は前日祖父の家に泊まっていた。
月子におはようと言うためである。

光太郎は、自分がやって貰って嬉しかったことはなんでも、月子に施そうとしていた。
大久保の華僑の老人達から教わった拳法を教えることもそうだし、かけっこもそう。おはようと言うのもそれだった。彼は自分が目が覚めたときに母や兄におはようと言われるのがなんとも言えず幸せな気分になるので大好きで、母から厳しく怒られる前には2度寝してはおはようを2回言ってもらおうなどと努力していた。

 人間には2種類あって、それは何かを得ようとする時に実力を発揮する者と、何かを守ろうという時に実力を発揮する者である。光太郎とその兄晋太郎は、典型的な後者だった。
中々笑おうともせず、痛いとも言わない月子の手を取った瞬間から、光太郎は本来の実力を発揮しはじめたと言える。月を照らすのが太陽の役目とでも、自分で気付いたようでもあった。

次男坊にして末っ子の光太郎にとって、月子ははじめての子分であり、はじめて自分が守らなきゃと思う対象であり、なんだか胸の奥から際限なく湧き上がってくる柔らかな気持ちの対象でもあった。月子が歳相応に笑ったり、痛そうに顔をしかめたり、優しい顔になったりするところが見たいと光太郎は思い、そのためになら自分を変えることも、厭わなかった。

生来の勉強嫌いがにわかに勉強熱心になり、暴れん坊が節度を覚えたのにはそんな理由がある。

 彼は取りあえず兄や母が予定より早く帰ってくると自分が嬉しかったことを月子にもしてやろうと考え、そのために、仲良くしている親友(の女の子)の相田翔がプロレスを仕掛けてきた時も、相手にせずに家に帰っていた。

それが彼の方向性を、決定的に決めてしまうことになる。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
リターントゥ神々の宴(10) 電網適応アイドレスSystem4/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる