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zoom RSS リターントゥ神々の宴(8)

<<   作成日時 : 2006/09/05 03:10   >>

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2時間後。
 手を繋いだまま寝ている幼い光太郎と月子の二人を見て、猫の絵柄のタオルケットをかけると晋太郎は微笑みを浮かべたまま、祖父の待つ居間へ行った。

祖父英太郎は、優しく笑っていた。

「また背が伸びたか」
その問いに、晋太郎は光太郎を省みてうなずいた。
「ええ」
「体重は落ちたか」
「はい」
優しく言う晋太郎。祖父の前にあぐらをかく。

 英太郎は口を少し開いて手を叩く。それは魔術の開始を示す無発音領域の起動キーであった。

「三諸の、神の神杉、過ぎしより、影にみえつつ、寝ねぬ夜ぞ多き」

英太郎と晋太郎の表情が凍る。感情が死に、二人は心を覆う仮面をかぶって無表情で対話をはじめた。
「あとどれくらい生きられる」英太郎は静かに尋ねた。
「早ければ2年。遅くて4年です」静かに返す晋太郎。そこに悲しみはなく、悲哀もない。魔術師は魔術を使う時に魔術をもって感情を殺してしまう。そうでなければ私利私欲で力を行使するからだった。
「分かった」
「私は”計画”のお役に立てるでしょうか。師よ」
「分からぬ」英太郎の声はあくまで平静で、晋太郎もまた、平静だった。
素の英太郎であればかわいい孫を思って声が震え、目をはげしく動かしていたろう。晋太郎は寂しそうに微笑んでいたろう。だが二人は魔術師として話をしていた。

「私の残り寿命はわずかです。これ以上短くなっても問題はありません」
「お前を”計画”に組み込むための献体としよう。だが最善の計算結果になるかは分からぬ」
「構いません」

二人は同時にうなずくと、術を解き、その後で互いに何も言わず、眠っている光太郎を見た。
月子をよほど気に入ったのか。あるいは兄が悪夢を見る光太郎にそうしていたようにしていたことを真似してか、光太郎は月子の手を握ったまま、寝ていた。

「昔、原初の人間を探したことがある。本物の人間、最強の魔術的人間を」
英太郎はぽつりと言った。
「神話にあらわれる最初の人間ですね。それは最初の人神族でもある」
晋太郎はそう返事した後、英太郎を見た。

「オリジナルヒューマン。それがあればと思う。それがあれば、あるいはお前も癒すことも出来ように」
「”僕”は弟が幸せなら、いいんです。それに原初の人間なら僕は知っている」
英太郎が誰何する前に、晋太郎は微笑んで言った。
「オリジナルヒューマンはすべての原型。言うならば編む前の、染める前の毛糸です」
「それが?」

 晋太郎は祖父に笑って見せた。
「僕の弟は純潔で、無垢だ。ひょっとしたら、月子ちゃんもそうかも知れない。ね? おおじいちゃん。僕は確かに、原初の人間を知っているんです」

若い天才魔術師が出した途方もなく平凡な答えに、英太郎は目を開いて驚いた後、続いて優しく笑ってその肩を抱いた。
そしてわしの孫はどんな大魔術師よりも才能があると言って褒めた。


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