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zoom RSS リターントゥ神々の宴(7)

<<   作成日時 : 2006/09/01 03:33   >>

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光太郎は、即座に兄の真似をした。偉そうに月子の前に立ったのである。
なんの表情も伺い知れない瞳で光太郎を見あげる月子に、光太郎は笑って見せた。
「俺、光太郎。……お、お前の兄ちゃん」
そして兄がするように、手で月子の頭を撫でた。

じっと光太郎を見つめる月子。光太郎はおかしいなと思いながら一所懸命、撫でた。月子の髪が、ぐちゃぐちゃになる。

髪を横目で見た後、光太郎を見つめなおす月子。その目には涙が溜まっている。
ひるむ光太郎の前で、月子は目に手をあてることなく泣き出した。大泣きする。

 びっくりした後、優しく微笑む祖父と兄。
自分も泣きそうになっている光太郎と、大泣きしている月子を晋太郎は抱き上げ、晋太郎は優しく微笑んで月子を泣き止ませた後、自分は兄ちゃんになれないんだと絶望しかけた光太郎に、大丈夫、すぐ光太郎も同じことが出来るようになるよと言った。

 余命が短いことを良く知っているせいで優しいのか、それともあまりにも優しく、その優しさを愛した天が地上でその優しさが汚されることがないようにと命を縮めたのか、そのどちらの説をも本当のような気にさせる晋太郎は、優しく微笑んで身体を揺らした。

「光太郎も素直ないい子に育ったようだな」
英太郎はそう言って皺深い顔を満足そうに緩めて笑った。

 義手の左手をキリキリと動かし、指先に紙の蝶を出現させた。
光太郎と月子が同時に指先を見、続いて蝶が生き物となって飛んでいく様に目を丸くする。

笑って英太郎は左手を動かし、幾千幾万の蝶を出しては羽ばたかせた。瑠璃色の羽も美しい、それは異国の蝶であった。

 みんなして上を見て、遠くなる蝶を見る。
英太郎は笑っていて、晋太郎がついで笑った。月子と光太郎は、同時に笑った。
今度こそ本当に満足してうなずき、英太郎は口を開いた。陽気に、能天気に。

「月子の髪を整えたら、甘いものでも食おう」

「おはぎなら、あります」晋太郎は言った。
「うむ?」
「僕、そういうの作るの好きなんです」
自分を見る英太郎に、そう言って微笑む晋太郎。
晋太郎、弟相手に和菓子の研究に余念がない。高校生の趣味でらくがんや目にも楽しいきんつばなど作れるのは彼くらいのものである。
元は甘すぎるものを食べがちな弟を心配し、和菓子がダメな弟の口に合うように生来の凝り性で研究を重ねてついには一流の味を出せるようになった、そんな人物であった。

「ふむ。晋太郎はわしに良く似ているようだ。やはり菓子は和菓子が一番」
「お父さんは僕が、俺にそっくりだと」
「そっちは気のせいじゃ」

晋太郎は楽しげに笑って軽く咳き込むと、光太郎と月子を降ろして手を繋がせた。
二人は互いに互いを見た後、晋太郎を見上げる。

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