ガンパレードオーケストラ 青の章(7)

 ”はくちょう”は夢を見ていた。
最後に飛んだ日のことだった。繰り返し再生し、洞窟のようにうたがれたハンガーの隅で夢を見ている。

 どんな航空機もたどりつけない、地球が丸いことを実感する高度41000m。
白い雲を抜け、ストレーキも引かなくなった高さ。青すぎて黒く見える天。

音はなく、ただ地球とそれ以外の狭間を飛んでいる。

”はくちょう”はエンジンを消火させるとゆるやかに放物線の頂点を過ぎ、そして降下を始めた。
これから先の1分間は、無重量状態だ。高度が落ちていく。39000、38000……

”はくちょう”は機体を暖ロール。天井に開いた小さな窓からパイロットと共に地上を見渡した。

 建物も国境も見えず、海は青い。ただ日本だけが、森に包まれていた。
雲が何かの力に追いやられたのか、小笠原の付近だけ巨大な円を描くようにクリアだった。雲が、切り取られているよう。

”はくちょう”のパイロットは雲を異常と判断。機体内に収められた偵察ポッドを作動させる記録スイッチを入れた。作動しない。

”はくちょう”はパイロットにエラーコールを返した後、動翼が可動しないことに愕然とする。
エラー。エラー。エラー。この機体が空を泳ぐことを拒否するように、次々と機能が停止する。

激しい無線ノイズ。チューニング音。

「こちら、皇帝号。そっちはなんだ?なんでそんなものが空を飛んでいる?」

ふいにはっきり聞こえた声。

外殻を何かが支える音。
”はくちょう”が恐怖に暴れると、”それ”はこんな天にも慈悲があるのだと示すように、機体を優しく支え、燃え尽きないように”はくちょう”の軌道修正を手伝った。何かが離れる音。原始的な後方警戒装置が距離が離れていくことをブザーで示した。

センサーが回復する。
”はくちょう”が全ての計器の回復を確認した時は降下開始から2分30秒が経過していた。

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 ハンガーに埃をかぶって眠る白天は無意識に動翼の下についた空気取り入れ口を動かした。可変ランプ作動、まるで高度34000mにいるかのように振舞った。

 傍で基幹制御系の整備をしていた都綾子は駆動音に顔をあげたが、航空機の専門家ではないので、白天が何をしようとしたのかは、分らなかった。

 シートにくるまれた、巨大な機体を見上げる都。
何かを話しかけようとして、やめた。

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