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zoom RSS リターントゥ神々の宴(5)

<<   作成日時 : 2006/08/27 02:24   >>

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兄の名を、玖珂晋太郎という。

 その日、玖珂晋太郎は身体の調子も良く、久しぶりに学校にいた。
彼の身体を蝕む病魔も、春の陽気に負けてうたたねしたか、進行を一時やめたようであり、今日の彼は、痛みに顔をしかめることもなく、春風のように微笑んでいた。

 玖珂晋太郎は身長高く、顔立ち高貴な美男子であり、病弱ながら成績抜群で全国模試でも一番は千葉(千葉昇、頂天のレムーリア2部の主人公)か、玖珂かと騒がれるような、そんな人物であった。

 もっとも本人は成績など全然気にしておらず、手芸部の光り輝くお兄さんとして君臨するほうが、大好きである。
その日も、部室で黙って編み物をしており、編み物をしていると周囲に女子が集まり、彼ははにかむように声を掛ける女子に、作業の手をとめて口を開いた。

「なに?」
その声は優しかったが、何人かの顔を赤くするには十分な攻撃力があった。
「あ、えと、小さいよね、その手袋」
勇気ある一人が、そう晋太郎に言った。鳴沢清美という、そばかすも愛嬌な、そんな娘である。
「うん。小さいね」
晋太郎は、優しく笑ってそう言った。
「だ。だれかに、あげ、る、とか……?」
清美の影に隠れている相田みなおが、声をかけた。
「うん」
晋太郎の言葉に、女子、大騒ぎになる。
晋太郎は騒ぎが収まるまで作業した後、改めて口を開いた。
「弟に」

 それで、本人以外の全部が安堵した。なぜか顧問の女性教師までほっとしているのは、晋太郎しか気づかなかった。

「どんな人なんですか」
後輩が尋ねた。いまどき珍しい、おさげの娘であった。
「可愛いよ。ちょっとまってね」
晋太郎は生徒手帳にはさんでいる写真を取り出した。普通にそんなものを持ち歩くあたり、この人物、並外れた弟LOVEである。

 多くの娘と女教師が、小さな写真をほぉ、と見た。

「兄ちゃん」
部室の、横開きのドアを開けて、そんな声をあげて走って来たのは9歳の光太郎である。
晋太郎は即座に編み物をやめて立ち上がり、走ってくる弟を受け止めた。
そして受け止めきれずに椅子におさまった。

「兄ちゃんっ」
 光太郎は顔をあげて兄を見上げる。嬉しいのだが、それが体当たりで表現されるあたりが、後まで連なるこの人物の全部を表しているような気がしなくもない。
兄は慣れた手つきで弟の髪にはさまる葉っぱだ毛虫だをよけてやって、微笑んだ。
「良くここだって分かったね」
「教えてもらった」
「そうか」
小学校では乱暴者で知られる光太郎だが、兄を前にすると途端に甘えん坊になる。というよりも、戻る。すぐに兄の膝の上に乗り、幼児のように興味深げに周囲を見、足を振った。

兄弟のこの図に娘達の一部はよろけ、一部は必要以上に顔を赤らめた。
二人して微笑まれた清美とみなおは、なおのことだった。

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