NOTボーナス 鼓動海

 タイガー・テンダーブルーは叩いて直す拳の持ち主である。
その手の淡い輝きは彼の誇りであり、同時に悲しみだった。

ヘリを殴り、撃墜し、着地する。

 戦うたびに、タイガーの耳は自分の心が乾く音が聞く。
その音を聞くたびにタイガーは思うのだ。歯を食いしばり、涙を堪え。なぜ戦う以外の道を探さないのかと。

そう思う自分も、暴力を使っている。
タイガーは泣かない。ただ泣きそうになる。
タイガーはペンギンの脚をつかんで敵に投げつけ、ペンギンは二丁拳銃のワルサーP99を撃って全戦闘ヘリを撃墜した。

 いつのまにか頬が切れ、血が出ていた。
袖で、頬の血より痛い水を拭いながら、炎に照らされてタイガーは考える。思うことはいつものこと、本物の虎は、戦う時に悲しくないのだろうかと。

/*/

 燃えるヘリの群の中心で、タイガーはにわかに打たれた拍手を聞いて顔を上げた。
見れば銀色の髪の黒服が、拍手をして佇んでいる。
均整の取れた肉体を鍛え上げた、そんな女だった。

「いい戦いだったわ」黒服は銀色の髪の毛をかきあげて、笑った。
いつの間にか銃が握られている。
「YS、新しい第6世界の支配人」タイガーは片方の足を引いた。
「そうね。RSが死んで出世できて、貴方のおかげで里帰りできた。いい男は私を助ける」
全力でこちらへ向けて移動する是空とサチコの気配を感じながら、YSは顔をあげて可憐に言った。

「貴方が助けたあの娘ね、自殺をしたわよ」

タイガーは何も言わなかった。ただ黙って目を開いて顔を歪め、その手を輝かせただけだ。

「残念だけど、私達のせいじゃない。彼女の選択よ。愛しい人のところにいくと」
タイガーは、泣かなかった。泣くことが許されるような人生は歩んでなかった。

YSは距離は離れていても抱き寄せるように優しく言った。
「いい加減に気づきなさい。貴方たちがやっていることは、ただの時間犯罪だと」
「だからどうした」タイガーは言った。「それでも僕はこの手を使う。それでも僕は治し続ける。手が届くところに死に掛けているものがあれば、僕は戦う。敵も、味方も関係ない」

YSは言った。
「貴方は便利な道具として扱われているだけ。死んだ水の巫女の代わりの、ただの癒し手」

 タイガー・テンダーブルーのその手が淡い輝きをあげる。その手は彼の誇りであり、同時に悲しみだった。

「人の悲しみと優しさがこの手を生んだ。いつかは悲しみがなくなることを願う。優しさだけが手のひらにあることを願う。黙れセプテントリオン、例え事実がどうあろうと、僕がやることはいつもと同じだ」

YSはまた来るわと言い残し、優しく笑って後ろに飛んで姿を消した。
タイガーは同時に背を向け、誰にもその表情を見せることはなく歩き始める。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 12

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた
面白い 面白い
ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
かわいい かわいい