ガンパレードオーケストラ 青の章 永野記 承前2

 永野がヘルメットをかぶり終わるのをまっていたように降下戦闘のサインが点灯した。
 大型スライドドアが開かれ、ロープが垂らされる。
ローターの爆音に消されて黒いウォードレスの一団は、大型ヘリはやかぜから続々とロープを伝わって降下を開始する。

 奇襲は成功だった。最初に着地した最古参兵と先任下士官である若宮が手際よく97式突撃銃で守衛とおしゃべりに来ていた家政婦を射殺、当面の場所を確保して一隊が距離を取った縦列で移動開始、一隊が火力制圧を開始した。

 永野は、ロープを伝わって降下したが、その速度は随分早すぎた。降下と言うよりも落下である。痛みが走るが、永野は我慢した。
 走る。小さな建物の影へ。2脚を広げて重機関銃を持った。
彼の仕事は待つことである。重機関銃は制圧射のためではなく、純然とした攻撃のためだった。

制圧は、軽機関銃装備の他の仲間がやっている。
弾をばらまき、任務が終わるまで敵に顔を上げさせないのが彼らの役目だ。

手が震える。永野は手を噛んで震えを静めたいと思ったが、装甲とヘルメットがそれを阻んだ。睾丸は盛大に縮こまっていたが小便は出なかった。
汗が出る。額の汗がめに入らないように眉毛の上に張ったシールを伝わって汗が頬に流れて行く。

目は限界に開かれていて、今にも飛び出しそうだった。

 番犬として飼われていたか陸軍山岳騎兵の戦闘獣である雷電が一匹、暗がりから出現した。どうやら放し飼いだったらしい。
突入班の最後尾に襲いかかる。火線が集中する、止まらない。突撃銃や同弾を流用する軽機関銃では弾丸の運動エネルギーが小さすぎて雷電の積層生体装甲を打ち抜けないのだった。

「アイアンマン(永野)、射撃開始。目標雷電」無線機から山本の声。永野は震えながら口を開いた。声よ出ろ、声よ出ろと念じていた。
「陸軍の装備です。味方です!」
「いいや、敵だ撃て」山本の声は静かだった。
「隊長っ!!」永野の叫び。

「アイアンハート、アイアンマンが駄目になった。銃を奪って任務を果たせ」
山本の冷静な声を仕舞いまで聞く事なく永野は叫びながら引き鉄を引いた。
 激しい反動。だがウォードレスの強化された人工筋肉が押さえ込む。機関銃と銘打ってもこの重機関銃は命中精度を重視した日本伝統である敵撃破のための機関銃だった。
あれだけ弾を打ち込まれても傷ひとつ、ついてないように見えた雷電が、重機関銃には簡単に打ち抜かれて犬のような叫び声をあげて頭を吹き飛ばされて死んだ。

自らがやったことに震えてしきりに手の汗を拭き取ろうとする永野。
いつのまにか近くまで寄ってきていた山本は良くやったと言い、その後で若宮からの無線報告で目標である柱夫妻の射殺に成功したと聞いた。

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