BALLSボーナス ヤガミ1/6 (1)

「やーがーみっ」
 弱い義体版、もとい小悪魔の舞踏子をそのまま小さくしたような小さい舞踏子は開いたドアから顔を出してそう思い人に声を掛けた。甘い声と言うよりも、ミルクのような声である。
ヤガミは既に洒落たビジネススーツに着替え、ネクタイを締めている最中だった。

「どうした?」
ヤガミは鏡を見ながら、そっけなく、そう言う。ネクタイをキリリとしめすぎてダサいと思ったか少し緩めたりまた閉めなおしたりする。舞踏子のほうは見向きもしない。
別にそっけないとか冷たいのではなく、これこそ本当にして普段のヤガミの反応なのだが、舞踏子はここ最近の甘々に馴れすぎて、この反応が、ちょっと嫌だった。

だから、小さい義体を使用している。気を引こうと努力中である。
小さい舞踏子、ガーターベルトをちらりと見せたり体育座りしたり、膝の上に乗ってみたりと、これはこれで大変なのである。
ヤガミがエステルを好きではないのかとこの頃舞踏子はいぶかしんでおり、それで、こんなことまでしていたのだった。ヤガミが小さい子好きならこっちの方が小さいので勝つ理論である。

 反応なし。

だから、ヤガミを蹴った。

ヤガミは、ネクタイを決めて鏡に己を見極めるようにウインクして言った。
「言いたいことがあるなら、言葉をつかえ……」
そして無表情になるとベッドに歩きだす。舞踏子もついてくる。
ベッドの上にはトランク一つ。TAGAMIから借りた浮かぶ鞄であった。
そこにサーラにアイロンかけしてもらったYシャツとパンツをいれていく。スラックスは二つ。ディナー用にジャケット一つ。

ヤガミは、白いオーケストラ事件の一件で舞踏子の示す未来予測を読み間違って工藤とか石田咲良とか工藤とか工藤(←この辺、ヤガミ主観でお送りしています。作者注)に大変悪いことをしたと考えており、谷口の霊が乗り移ったようにここ最近胃痛に悩まされていたが、この数日はそんなこともなく平静を保っている。

この態度が、おかしいと、多くの舞踏子(一部ヤガミLOVEのホープ)がいぶかしんでいた。
ヤガミはへこみだすと延々ひっぱるか弱い酒を飲んでぶったおれるのが常である。

 なんか、嫌な感じ。女の勘である。

舞踏子以外ではメイくらいにしか全然もてないヤガミのこと、舞踏子としては大丈夫だと思ってはいるが、思いたいが、気分は晴れない。

「ヤガミ、私に隠し事してない?」
見上げてそう言うと、ヤガミは眼鏡を指で押して言った。
「ノーコメント」
半眼ではなく、涙ためた感じの舞踏子。
「本当に隠し事してない?」
どこかイライラしているヤガミ。鞄を閉じて、歩き出した。
「だからノーコメントだといったろう。大体隠し事しているやつが、そんな質問で白状すると思うか?」
「それはそうだけど……もうっ」 追いかけて、追いつけない。
「出張にいってくる」 ヤガミは振り向かずに言った。
「まって、私も行く」 急ぐ舞踏子。
「すぐ戻る。夜明けの船のほうを頼む」ヤガミはそう言って、そのときにはじめて舞踏子を見て微笑んだ。

それが、2週間ほど前になる。

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