緑のオーケストラ本祭 原・ストライク(8)

 食料や嗜好品を除いて一番喜ばれたのは弾薬である。
続いて整備道具、装備であった。

 多くの品物が届いて皆満足したが、世の中はそうそううまく出来ておらず、届いて嫌な顔をするものの、あるにはあった。

 一瞥するなり源が埋めようと言い出したのは勉強道具である。
善行があきれたのは空輸されてきた勲章であり、こんなものを運ぶくらいならと、つぶやいて見せた。

中でも一番皆が嫌な顔をしたのが長距離無線機で、理不尽な命令が来ると思うと、皆が皆、壊れたままにしておきたいものであった。

 それでも善行は仕方なく、深澤と荒木を使って無線機を運び込み、セットアップ。
「あー。もしもし」
と、型どおりのことを、言った。

「た、ただたかさん? ただたかさんですか?」
無線機につけたヘッドホン聞こえてきた声は、鴨居カンナ、善行の小さなおつきの女の子である。
善行は片方だけつけたヘッドホンがずりおちるくらい変な顔をした後、慌ててマイクを手に取った。

「カンナ、くんか? どうしたんですか、なぜ無線機に」
 向こうでシャッターを切る音が連続する、フラッシュを焚く音も。善行はそれで、カンナと自分が政治ショーの道具に使われたことを、知った。

 目を細める善行。怒りが沸いた。
「あ、あの、わたし、ただたかさんがし、心配で……」
「僕のことなんか忘れればいいんですよ。無線を切ります。本当に忘れてください。じゃあ」
「まって、まってください、待って! お願い! お願い……ですから……」

無線の向こうで、ぶわっとカンナが泣くのを感じて善行は動揺した。戦場では無敵と思える指揮を見せるこの人物も、本当の意味で無敵ではありえない。

「泣かないでください」 後ろできくシャッターの音を聞きながら、必ず糞マスコミどもを一人残らず射殺してやると思いながら、懸命にやさしい声を出す善行。

「ここは戦場で、僕はどうなるか分からない。だがそんなことは貴方の人生にはこれっぽっちも関係ない。忘れてください。そして出来れば、戦争のことは、もう心配しないでください」

 翌日の新聞で感動の再会、美談の中の美談とされる言葉だったが、言ったほうはそんな気はなかったし、新聞に描かれたのを知って善行は激怒に激怒を重ねた。
年端もいかぬカンナくんを道具に使ったという事実が、善行には許せない。

善行が通信を切ろうとすると、気配を察知したか、カンナは矢継ぎ早に、泣きながら、おそらくは両手で大きな受話器を持ちながら善行に言った。
「ご飯はちゃんと食べていますか。歯磨きは? 着替えがどこにあるか分かりますか。部屋は掃除していますか……」

 延々と言われるうちに里の母を思い出した善行だったが、もう、カンナには冷たく出来なくなって、優しい声で、返事をした。

「大丈夫。僕の身の回りは石津さんがやってくれています。何も心配しないでも構いません」

カンナは、黙った。
善行はこれを妙だなと思ったが、深くは、考え切れてない。

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