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zoom RSS 緑のオーケストラ 原・ストライク(4)

<<   作成日時 : 2006/05/29 03:01   >>

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数日後。

 原素子は紙袋にフランスパンとオレンジと、かぼちゃとホールトマトと、食材を持って歩いている。今日の格好は細いジーンズに男物というかペンギンの襟付きシャツという格好で、靴の踵もそんなに高くない。ただ、化粧はそれなりにしていた。していないと子供と間違えられるからである。

ゆるやかなくだり道になっている石畳の上を歩いていく。この界隈は高い集合住宅が多い。建物は築百年を越えているものも多く興味をもって基部を見ると、1861年建築とか普通に書いてあった。

 路上に駐車されている歴戦のスバル360の窓を軽く叩いて挨拶して、玄関までの階段を上がっていく。近くで遊んでいた黒い肌の子供達がモトコと言って手を振ると、原はにっこり笑って紙袋からオレンジを取り出し、放り投げてやった。上機嫌に階段をあがり、3階の自宅に戻る。

 日本の風習で靴を脱ぎそうになりつつ、うーん。と考え、紙袋を、テーブルに置いた。
事務机に座って新聞を丹念に読んでいるペンギンを見て、笑う。

「新聞、好きなのね」原は牛乳を二つのコップに注ぎながら言った。
「平和で事件がない新聞だったら、そうだな」ペンギンは顔を上げずに言った。
「そんな新聞なんて、あるの?」笑って牛乳の入ったコップを渡しながら言う原。
「十年に一度あれば、いいほうだな」ペンギンはストローで器用に牛乳を飲んだ後、顔をしかめた。「コーヒーじゃないぞ」
「カフェインは身体に悪いわよ」原は、すまして言った。自分も牛乳を飲む。化粧を落とすために濡れタオルを電子レンジに投げ込んだ。
「健康に気をつかうハードボイルドはいない」ペンギンは、嘴をしかめて言った。
「じゃあ、健康に気を使うはじめてのハードボイルドになりなさい」原、命令。ペンギンは黙って原を見返したが、笑顔の鉄壁を越えられずにすごすごと新聞を読み直し始めた。

「コーヒー牛乳でいい」つぶやくペンギン。
「どうしようかなー」原は、嬉しそう。小さいことでも好きな男に言うことをきかせるのは、好きだった。

呼び鈴。原、コップを置いて玄関に行く原。覗き窓を見た後、ドアを開けた。

「こんにちは。郵便です」黄色いジャンパーを着た郵便屋だった。
不敵に笑い、原の向こうのペンギンを見た。
「久しぶりだな。どうした」ペンギンは、新聞を畳んだ。渋い顔で牛乳を飲んだのは、牛乳がまずいせいか郵便屋のせいかはわからない。
「人材不足でね、はい。郵便。仕事がんばって」郵便屋は笑って封筒を原に渡すと、瀬を向けた。
「新しい助手の手当ては」ペンギンが郵便屋にそう言った瞬間、原は目を細めて振り返ってペンギンを見た。「なによ、そんなに牛乳が嫌いなわけ?」
「前からの話だ」ペンギンは言った後、「お前が悪いわけじゃない。もちろん牛乳のせいでもない」と言った。
「一応アテがある。知り合いが探してくれてね。君にぴったりだと思うよ」郵便屋はそう言って、原を横目で見て微笑んだ。
「分かった」ペンギンは言う。
「はいはい。じゃあ、お楽しみに」郵便屋、走って逃げる。

ドアは閉まった。原はドアを派手に蹴った後、ペンギンをにらんで郵便物を投げつけた。
ペンギン、ナイスキャッチ。
「トム・シーバーの球のようだ」
「いやよ」原は言った。
「何が?」ペンギンは静かに言った。
「絶対いや。私、この仕事気に入ってるの」原は腰に手を当ててにらんだ。
ペンギンは黙って郵便包みを開封、手紙を開いた。
「ふむ」
「ごまかさないで」原の言葉はまったくその通りだったが、ペンギンはそれでも、手紙を投げて寄越した。
「次の仕事だ。いいから見てみろ」
しぶしぶ手紙を読み始める原。もう少しでペンギンの頭をかじるところだった。表情が変わる。
ペンギンが口を開いた。
「確かお前の、知り合いだったんじゃないか」

原が手にしたのは、ナース姿の、善行の写真だった。

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