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<<   作成日時 : 2006/05/25 16:33   >>

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(3)

「それで、今日はどこにいくの?」

白い雪に包まれた山間の厳しい谷の斜面、崩れかけた古い神殿の前でものを喋る馬のエクウスは上を見ながら。耳を、揺らして言った。

 馬上の女は、考えている。エクウスは考えるだけ無駄だと思ったが、悲しいことを言うのは嫌なので尻尾を振るだけに止めた。

馬上の女の雪避けのフードから見える青い髪は編まれていて、その髪の先には複雑な文様が描かれた金の環が下げられている。女は、おさげだった。
「今日は西にいこうと思うんだ」

 ひひん。
エクウスはそう馬語で返事すると、歩き出した。谷の厳しい斜面をゆっくりと器用に昇っていく。
深く雪の積もるところ、吹雪の強いところは、馬上の女が、これを払った。
大事に腰に差した角を削りだして作った短剣を引き抜き、呪文とともに中に封印された火とかげの力を借りて吹雪を押し止めたのである。
その白い左手の指には編まれた黒髪の指輪が結ばれている。一際寒いその時には、この指輪を両手で守るのがこの女の癖であった。

山の上に登る。地の果てまで続く山麓に峰々に張り付くように動く雲。激しい風。
馬上の女は目を凝らし、今までずっと来ていないが、今日は来ているかも知れない迎えを探した。

 今日も一生懸命探す女の姿を見て、エクウスは目を伏せて悲しそう。尻尾を、ちょっと揺らした。

早くも肩に雪が、つもりはじめていた。

/*/

 馬上の女がついに下を向いて帰るとつぶやいたのは、半日ほど過ぎた時である。
エクウスは雪をかきわけて歩き出すと、レディを待たせるのは悪い人だねと、控えめに印象を語った。エクウスは悲しそうな人を乗せているのが悲しそう。

ゆっくり谷に戻り、村に戻った。

冬篭りで普段はなんの動きもない村は、今日は珍しく騒いでいた。
珍客が来たからだ。
妖精王の友の炎熱の魔女が、尋ねてきているという。

 エクウスは耳を伏せて急いだ。馬上の女が、にわかに元気になったからだ。
交通事故がおきない程度に走った。
すぐにも広場の前で小さい子を抱き上げる魔女が見える。
馬上の女がフードからかろうじて見える口を開いた。
「アララ!」
アララ・クランとアララを抱く炎熱の魔女オゼットが同時に顔をあげた。
腕から出て、走っていくアララ。そして馬から飛び降りた女に抱きついた。
魔女に付き従う3名の護衛が、余人には分らぬ理由で男泣きした。

フードが、落ちた。今や馬から下りて馬上の女ではなくなった女は、若い娘だった。綺麗な青い髪をした海妖精の娘である。名前をサラと言う。

「オゼットさん、情報は、情報はあった?」
サラが魔女にそう言うと、魔女は少しだけ悲しそうに微笑んで、首を横に振った。
エクウスはそれ以上、いたたまれなくなって、耳と目を伏せて下を見た。

/*/

その日の夜。厳しい寒さに包まれた、雪の降る夜。

 馬が本を読むために特別に明かりがついている馬小屋で、エクウスは本を読む前脚をとめて口を開いた。
「僕ね、谷を出てターニを探しにいこうと思うんだ」
エクウスがそう言うと、その傍の柱で背を委ね、前脚を組んで物思いにふけっていた鼠妖精の勇者にして伊達者のジャスパーは、腰に下げたレイピアを揺らして、盛大にため息をついた。口を開く。
「バカだな。お前なんでそこまでしてやる必要がある」
「バカでいいんだ。僕は」尻尾を振ってエクウスは言った。寂しそうに言い添える。
「バカと言われるよりも悲しいことがあるから」

皮肉そうに笑う鼠。考えて、不意にどこか悲しそうに優しく口を開いた。
「まあいいか。確かに俺もこの谷は飽き飽きだ、付き合うか」

そうして背を預ける柱から身を離すとレイピアを引き抜き、Zの字に剣をきらめかせた。剣の巻き起こす風圧で10mほど先のマントを引き寄せ、マントをつけて身を翻す。
「猫がいるかも知れないよ」エクウスの言葉。
「いい猫もいるかも知れない」ジャスパーの言葉。
「そうだね。じゃあ旅にでよう」エクウスは言った。

誰にも知られないように一匹と一匹で荷物をまとめ、文案をエクウスが考えて文面をジャスパーが書き、そうして一匹と一匹は居心地のいい馬小屋を後にしてターニを探して旅に出た。

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