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zoom RSS 緑のオーケストラ 原・ストライク(1)

<<   作成日時 : 2006/05/25 00:41   >>

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 原素子は全敗の女である。
恋と言う恋で、一度も勝った事が、ない。

もっとも本人は、目を反らしながら気にしてないと、言う。
悪いのは自分ではなく相手であり、ついでに言えば、あんな男、私が見限ったのよと、言った後でヤケ食いするのが常だった。パンをかじりる彼女から睨まれたら、どうやって慰めたがいいかは、考えたほうがいい。

 その原素子は、湖面に映る夕日を見ながら腕を組んで、そのしなやかな背を丸くて小さい国産車、スバル360に預けて立っている。

手には、写真。銃撃で端は燃えていたが、原は左手のやけどと引き換えに、この写真を守っていた。

車は、止まっている。車内に収まりきらないテントだ寝袋だカップ麺だ鍋だかが、ごてごてと結わえられている。かれこれ地球30周はしているこの車は、良く故障してくれるのだった。

「手伝おうか」 原は、胸の谷間に写真を押し込むと、でっぱっている尻のせいで中々落ちないガンベルトを揺らし、顔を横に向けてそう言った。
「いらん」 車体の下からの返事。

「女がさわるとこいつは癇癪をおこす。湖でも見ておけ」

原は、優しく笑って車体に肘をのせてその形のいい顎を乗せると、優しく笑った。
誰も見てないと、原の表情は年齢よりずっと、幼く見えた。
「やっぱり、旅するならペンギンとよね」
「……そこのスパナをとってくれ」 ペンギンの翼というか、フリッパーだけが車体の下から出てきた。何かを探るように上下に動いている。
「はいはい」笑ってスパナをとってやる原。

ひっこむスパナとフリッパー。

原は30秒待った後、独り言のように口を開いた。
「人間相手やめてペンギンの奥さんでもやろうかな」
「ごめんこうむる」原の旅の友、ハードボイルド・ペンギンは即答した。

「何よ、言ってみただけじゃない」口を尖らせて言う原。
「冗談にはいつも幾分かの本気が混じっている」 ハードボイルド・ペンギンはスパナをしめなおすと、顔を出した。立派なキングペンギンだった。

器用にスパナを握ったフリッパーで原をさした。
「それと一つだけ言っておく、お前が悪いんじゃない。お前の趣味が悪いんだ」

少し考えて、悲しそうだった口をほころばせる原。
「何それ、なぐさめてるつもり?」
「いや、スカートの中身だ」笑わずに言うペンギン。

 ペンギンは踏みつけられた。

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原・ストライク

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(2)

 世界が終わるほど続いた騒ぎの最後は、なんということはない、いつも、毎日やって来る、ただの夜明けだった。

崩れ落ちた城の上を歩き、走り、そうして微笑み。
光太郎は手を伸ばして小夜を抱き上げてくるくる廻ると、最後に小夜が息が出来ませんと言うまで抱きしめた。

 その光景を遠くで見て微笑み、背を向ける、リュックの少女。背の丈は10歳ほど、表情はどこか悲しそうで、同時に優しい顔だった。もう振り返らずに、口を開いた。

「行くわよ。ストライダー」

 足元を旅する兎ストライダーは二人のために短く前脚で幸運の印を切ると、伊勢薙乃を追って走った。

光太郎を長らく見守っていた晋太郎は、マントを翻して、歩き始めた。
薙乃に並ぶ。

「なによ。ワールドオーダー」薙乃が涙を隠して袖を動かしていると、晋太郎は優しく笑った。
「そいつは失業したんだ。この間ね」それ以上は、何も言わなかった。
「そう。それは残念ね。でもそんなものよ。世の中厳しいもの」息を吸い込んだまま言う薙乃。
「そうかもしれないね。でも、そうでないかも知れない」晋太郎はそう思って言った後、昔、かわいいかわいい弟にしてやったように、口を開いた。
「それが本当にどうなのか、僕は確かめて見たくなったんだ。そうだ、それで君は助手を募集してないかい?」

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