ガンパレード・オーケストラ緑の章(67)

 好きだと言われて火焔は、息を止めた後、どんな表情をしていいかわからず、そしてその後、コガの毛皮をぎゅっと握って、顔を赤くして何も言えず、あー、あー!と獣じみた奇声をあげたあとどこか冷ややかな倖の表情を見て、走った。
逃げ出したのである。

 この頃、ワイルド?すぎて火焔はとにかくもてていない。あるいはバカが、行き過ぎた。本人もあんまり、もてるもてないは意識していなかった。

彼女の興味はそれ以前の段階として主として女に向けられており、有り体に言うと人間の成長過程の一環として、同性の友達を欲しがっている。
かつて神海を拉致して厩舎に連れて帰ったりしているのは、そういう理由による。こう言うことだけには妙に気が回る英吏が紅を火焔に引き合わせているが、これも、そういうことを背景にしてのことだった。もっともこの親切は不発に終わり、紅は英吏が火焔について向けている無条件の好意に気づいてから、火焔と距離を置いていたりする。

 火焔は、そういうのがよく分からない。なんで紅が冷たいのか、神海が嫌がるのか分からない。誰かに相談するという知恵もない。またあったとしても、相談する相手は人間ではなくコガだった。この雷電に育てられた少女は、戦闘の仕方は分かっていても人間とはうまく付き合えていなかった。

同時に、身体が成熟するにしたがって異性への興味もわいていたが、同性以上に、どうつきあっていいのか、火焔には見当もつかなかった。男とは普通に話せはするのだが、その先どうやれば進展するのかは不明だった。

だから竜造寺が自分のことを好きだということを聞いた時には、激しく動揺し、厩舎に逃げていた。予想外の事が起きると威嚇する、もしくは速攻で逃げ出すのは動物としては正しい行為である。
もっとも、人間の行動としては、奇矯が過ぎた。
逃げた先で倖に好意を告げられた時は、もっとすごい勢いで走って逃げている。

火焔はよく分からない。
 どう人に接していいか、分からなかった。意味分からない。
何が分からないかも分からない。だから、走って逃げていた。

/*/

一方そのころ、独り残された倖は、予想外のことにあって立ったまま呆然としている。その後、彼としては珍しく、ちょっと面白そうに笑って、頭をかいた。

「なかなか可愛いじゃないか」
倖は独り言を言う。コガの顔を見て、言葉を続けた。
「やっぱり、坊ちゃんにあげるには、惜しいおもちゃだな」

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 13

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた 驚いた
面白い 面白い
ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
かわいい かわいい