ガンパレード・オーケストラ緑の章(66)

 一方そのころ。深夜の隊長室。
 善行は、英吏のまとめた先の戦闘の弾薬消費量のメモを見て、不機嫌になっている。
「一戦で弾薬の半分消費、か……」
 つぶやく善行。
「戦闘要員は軽傷が源、英吏。中傷が牧原妹、重傷竜造寺。無事な戦闘要員を数える方が早い。戦車は要整備ときている」

 口を開く善行。
「自分は戦争上手だと思っていたが、違って良かったと思ってますよ」
 不機嫌そうに、そう言った。

「ま、戦果は悪くねえよ」椅子に座って、のんびりと瀧川。夜戦が苦手な山岳騎兵をカバーする意味で戦車兵は昼間寝ているので、夜は元気である。
「この状況ではどれだけ倒したかは、あまり問題ではありませんよ。どれだけ生き残れるかが問題なんです。くそっ」

「誰も死んではいない」腕を組んだまま、そう言う舞。
今のところはねと嫌みで返そうとして、善行は黙った。眼鏡をとって、こめかみを指で抑える。部下に八つ当たりしてもどうしようもない。

言い直す善行。
「たしかに。しかし、弾が欲しい。整備もだ。敵が襲ってこないならもっといい」
「欲張りだな」半眼の舞。青相手でなければ、だいたい彼女は半眼である。眠そうと言うよりは剣呑で、剣呑と言うよりも、不機嫌そう。
「指揮官なんてそんなものです」イライラを押さえて言う善行。

「敵だけはどうしようもない」さらに目を細める舞。
「そんなことは知っています」ため息をつく善行。
「それ以外は我が従弟殿が手を打っているはずだが」少し笑う舞。
「まだ効果を現わしていない。上は我々を黙殺する気かも知れません」善行からついに弱気が出た。

 長い沈黙。瀧川が頭をかいてなんと話そうとするうちに、舞が口を開いた。
「リンゴが届いた」言った言葉は、それだけだった。この時だけは、舞は眠そうではない。
「それが?」善行の言葉を、瀧川が笑った。瀧川には意味が分かった。
「青は私がどこにいるか知ったのだ」舞は、静かに言い、そして言葉を続けた。
「ならば、他の何は届かなくても、青は来る。それでは不十分か? 善行忠孝」

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 一方そのころ。
ハノイ空港。
 巨大な輸送機とコンテナ群の前。
改装希望号を背に、同じポーズで巨大な剣鈴を差すぽややんがいる。黙っていれば、もちろん格好いい。名を、希望の戦士。この世界ではあいかわらず青の厚志とも言う。
その肩には太った猫神。赤い短衣を身につけた、目が大きくて毛がふさふさの、立派な立派な戦神だった。

 猫の髭が揺れる。口を開く。猛獣のようににゃーんと鳴いた。
その身体に優しく触れ、笑う青の厚志。

 背後では遠坂、瀬戸口が同じように剣鈴を立て、難しい顔をしている。ボスにはいろいろ言いたいことがあったが、青は、世界中の何よりも一人を優先するし、それが出来ないとなると、台風並に暴れた。

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