NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(58)

 英吏と源は雷電を伴って着地すると、同時ににやりと笑った。
遠くの爆発音。戦争音楽。
「本隊が戦いだしたみたいだな、どうする?」
源がそう言と、英吏は冷たく眼鏡を指で押して口を開いた。
「決まっている」
 優しい、と言って良い表情で笑う源。
「へへ……だな。……紅と結城を呼んでくる」
「ああ」英吏はクイーンオブハートの毛皮の中に倒れ込みたいと思いながら、そうせずに返事した。
源が、声をかける。
「5分くらいで戻る。5分だが休めよ」
「了解した。クイーンを休ませよう。クイーン。休め」
 クイーンは地面に座り込んで顎を出して、舌をちょっと出して休みはじめた。
 走って行くグリンガムと源。
英吏は疲れていたが最大の虚勢を張って逆方向に歩きだす。クイーンオブハートがついてこようとしたので、休め、そのままと言って歩きだした。
 森の木の影から心配そうに顔を出している斎藤が、この姿を他人に見られたらどうしようと迷った後、駆け寄って来た。

「英……吏さん」
斎藤の声に、英吏は傲慢に言った。
「そなたの力を少しは借りたが、まあ、ただの人間と雷電と、猫だけで、これぐらいは出来た」
「……はい」
目を伏せる斎藤。
そして英吏は、少しだけ優しく笑った。人間相手には慣れてない、笑いだった。
「だから、心配するな。そなたはそなたの好きにせよ。戦いなど、愚劣極まる。殺すよりも生かすために努力する方が何倍も大変で、報われないと俺は思うが、だからこそ価値があると信じている」
 顔を上げる斎藤。英吏を、見つめた。
「英吏さん……」
「分かったな。もうすぐ源たちが来る。戦いは終わりだ。勝ちは決まった。だから先に帰れ、斎藤」
「……でも」
「帰って来た時にそなたに出迎えられたい。竜造寺もそう思うはずだ」
なんでそこで竜造寺さんなんだろうと斎藤は思ったが、結局何も言わなかった。
代わりに、思ったことを言った。

「英吏さんは、本当は戦いが嫌いなんですか……?」
英吏は静かに言った。
「俺には他に生き方がない。俺が欲しいものはここにしかない」
そして、純真な子供のように優しく言った。
「だが、そなたが欲しいものは戦場にはない。他を探せ」

 背を向けて、歩きだす。 5歩歩いて、口を開く英吏。
「それと」

英吏は、からかうように言った。
「ヒゲをひっこめておけよ」
真っ赤になって両手で頬を隠す斎藤。
英吏はふふんと笑うと、今度こそクイーンオブハートの元へ歩きだした。

しばむらと呼ぶ遠くの声。
 斎藤はあわてて走って逃げた。

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「しばむら……」
 紅に対して、英吏はなるべく疲れを見せず、軽く言った。
「どうした、紅」
 紅はヘルメットを取り、頭を軽く振って編んでまとめてあげた髪、あげた故に白いうなじを瞬間見せてまっすぐ英吏を見た後、早口の中国語で罵倒した。
 罵倒した後で、泣いた。

あわてる英吏。

 遠くからその光景を見る斎藤。最後まで見れずに、顔を伏せ、泣きながら走って行った。

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