NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(56)

 一方その頃。善行は茂みの中を全力で走っていた。
竜造寺と先内を助けるためと、竜造寺たちのかわりの偵察員として、自らが出ていたのだった。
通信機から、声が聞こえる。
「こちら、牧原、竜造寺と先内を確保、竜造寺重傷。意識不明」
 善行は憮然として口を開いた。
「こちら100。撤退命令を出したはずですが?」
「すみません」

 考える善行。口を開く。
「懲罰は覚悟しておいてください」
「はい」

 誰かを見せしめに銃殺にする。牧原はそれなりに名家だが、竜造寺や芝村ほどではない。善行は考えをもてあそんだ後、ただたかさんという涙声を思い出して、悪い人ごっこするのをやめた。
熱すぎる緑茶を飲んだように苦笑し、ため息をついて口を開く善行。

「竜造寺君は動かせそうですか」
「たぶん。ただ、ジジは、竜造寺の雷電は動かないと思います」
「怪我ですか」
「いえ、竜造寺の最後の命令はジジに伏せろでした。だから死ぬまで命令を守るはずです。……餓死するまで」
「なるほど、竜造寺くんの意識が戻らないようならジジを射殺します」
「それは」
「私がやりますよ」
「……はい」
善行は 移動していた二両の人型戦車に並んだ。さらに前に出る。カトラスを抜き、走る。

 砲撃の跡地に、月面のようにほじくり返された大地を走り、牧原たちの横を通り過ぎなら、口を開いた。

「しかし雷電は貴重だ、なるべくそうならないように、最善の努力をしてください」

 その背を見送りながら無線に声を入れる牧原兄。
「はい。あの、隊長は」
「命令違反するような人には教えてあげません」
善行は誰も見れないことをいいことに舌を出しながら言った。
言葉を続ける。
「現命令を順守せよ。牧原」
「了解しました。オクレ」

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 それにしても命令違反者が多い。
なぜ命令違反をするのか。僕が、なめられているのか。

普通の士官ならそうだと考えて苛烈な刑罰をかけ始めるだろう。
だが善行は、普通ではなかった。
善行は鬼だった。ただの鬼ではない。恐らくは地獄の鬼が表敬訪問するほどの、鬼の中の鬼だった。行き過ぎた悪が往々にしてもっとも善なるものであるように、善行も、鬼が行き過ぎて菩薩のように優しい人物になっていた。この鬼は、墓の下より現実の方がより地獄であることを良く知っている。

 人型戦車より速く走り、周囲に眼を走らせながら、善行は自分が命令を破るケースを考えた。

 やめてください、やめてください、ただたかさんと泣かれたら、僕だって敵を見逃すくらいのポカはやる。

 要するに、そう言うことか、と善行は納得した。
家族意識が強いのではなくて、本当の家族なのだな。

 ふむ。

善行はヘルメットを外した。背中のヘルメットラックにヘルメットを固定し、広く視界を取る。

 丘の向こうからミノタウロスに護衛されたアンフィスバエナの群れ、60。

善行はカトラスを胸の前に掲げると、次命令する時は家族思いを計算にいれて命令を考えましょうと思った。丘の斜面を埋め尽くすように現れた敵の大群を前にしては、間抜けもいいところの考えだった。
 戦争を馬鹿にすることはなはだしく、だからこそ善行は、地獄の鬼より鬼に見えた。微笑んで、レーザーの雨あられの中、指揮を開始する。

「100より全車、正面、砲戦開始」

決戦が、はじまる。

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