ボーナストラック ガンパレード・オーケストラ緑の章(54)

 そして英吏は肩で風きり、まごうごとなき勇者が己の剣を抱くように己が雷電の名を呼んだ。
クイーン、クイーンと。

 クイーンオブハートは疲れていたが、主人の心に反応して、勇気を奮い起こした。この美しい純白の雷電の女王は英吏に心の底から服従しており、この男が死ねば命じれば死に、限度を越えて戦えと言われたら、必ずそうした。

 擦り寄ってきたクイーンオブハートの鼻面を優しく叩き、その背に乗る英吏。
斎藤の背にぶら下がっていた黒猫を一匹、英吏は首筋つかんで、雷電の背に乗せた。

駆け始める英吏。
走りながら英吏は己がもう一本の剣を呼んだ。それこそは身の回りの全てを世界最高品だけで固めるこの男が世界中から選んだ、ただ独りの人物だった。

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一方そのころ。源は、英吏の元へ行こうとする紅を押さえながらその肉体から意識を飛ばしていた。

 身体から浮き出た源の形をしたものは、不意に閃いた。どこか心をしめつける一心不乱の呼び声がした。 飛ぶ。見つかった。

 英吏が、熱病にうかされた恋人だか、泣き出した子供のように自分の名を連呼している。
健司、来い、健司と。

 一瞬意識不明になった源だが、次の瞬間、なんだあの野郎、柄にもなく熱くなりやがってとつぶやき、そしてにやりと笑った。

紅を結城の方へ投げやり、グリンガムを呼んだ。
紅を後ろから抱きとめる結城。グリンガムの背に乗った源を見た。口を開く。

「どうしたの?」
「ツレションだ」
 源の返事は短かった。そして真っすぐに駆け出した。
顔は、笑っている。馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎と言ったあと、だが、俺を最初に呼んだ事だけは褒めてやると言った。

頭上の爆音。

 背後の爆発。
源は無視した。純白の雷電が見える。
追って来るヘリを引き連れ、並ぶ源。背後の爆発に照らされて、面白そうに笑って言った。
「お前を怒らせるて、どんなド外道だよ英吏。……あーそう、親父はなんて言ってたかな。そう、レイカちゃんでも殺そうとでもしやがったか?あん?」
 英吏は源の言葉に反応せず、口を開いた。
「俺の好みの女を戦争の道具にしやがった、この国に巣くう蛆虫どもがいる。ふん。面白い、よくぞ俺の美しいこの国と、俺の趣味を汚してみせた。俺は決めたぞ、必ず奴らを叩きつぶして、もって俺の趣味と俺の国の恥辱をすすいでやる、絶対にだっ」
 でけえ喧嘩だなと源は思ったが、ダチの出入りにいかねえ俺様じゃねえよなと、とりあえず片目つぶって言った。
「しょうがねえな。んで、とりあえずの喧嘩相手は」
「上の敵だ。全部ぶっ飛ばす」英吏は堂々と言った。
変な顔をする源。
「要するにやつあたりか」
「当たり前だっ」

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