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zoom RSS ボーナストラック ガンパレード・オーケストラ緑の章(52)

<<   作成日時 : 2006/04/20 00:34   >>

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 敵、うみかぜゾンビに一番最初に発見された英吏は、一人クイーンオブハートを駆って逃げ出していた。仲間を巻き込むことを恐れ、とっさの判断で逆方向へ逃げ出していたのである。

 空を飛ぶ敵に、山岳騎兵は無力である。
囮として駆け、森に逃げ込んだ。走る走る。
上空の爆発音。
 英吏はそれを、人型戦車の砲撃だと思った。
そして、それで命が助かったにも拘わらず苦い顔をし、対ヘリ戦で人型戦車を使うべきではないと考えながら、もう何歩か走らせた。彼の雷電、クイーンオブハートが苦しそうに息をしているのに気づき、降りて、一緒に歩いた。ヘルメットを取って、髪を振る。
クイーンオブハートの頬に優しく触れて、ふがいない主人で済まぬ、と詫びた。
結城以外は誰も知らぬ英吏の素顔である。クイーンオブハートは目をつぶり、これまた主人以外には聴かせぬ声でゴロゴロと喉を鳴らした。微笑む英吏。

異形の化け物が英吏の前に降り立ったのは、その時である。

化け物はあきらかに脅えていた。
増殖する細胞がウォードレスの装甲を侵食し、既に皮膚と一体化させている。左腕から見えるのは、密集した白い羽根だった。
得体の知れない液体が右手からしたたり、指先から紅い目がのぞいている。

何の冗談か、かぶった子供向け番組の仮面の向こうで、紅い目が、揺れていた。


 英吏は呆然としたが、次の瞬間、何をどう間違ったか、知り合いの名前を言った。
「斎藤……か」

 斎藤だった化け物は首を左右にふりながら、気持ち悪い右手を隠しながら後退りする。
いやだ、いやだっ、と心の中でつぶやいた。
英吏は、不思議そう。
「どうしたんだ、斎藤」
「ち、違いますっ。そんな人知りませんっ」
 3mの距離が、遠い。が、英吏はそう思って無いようだった。

「いや、そのかわいい声は斎藤だろう」
「チガイマス」
「声色を変えなくても」

 斎藤だったものから涙が出た。感情固定したはずなのに、全然効かない。自分の心が簡単に壊れていく音がする。
だめだ、もうだめだと思いながら口を開く斎藤。声が震えた。

「私は斎藤じゃありません。斎藤さんは、その、信念がある人だから戦いなんかしません。絶対……いいつけやぶったりしません……」
 英吏は、斎藤の反応を見てなんとなく事実をつかんだ。まだ善行が人型戦車を温存していることにほっとしながら、珍しいことに人に、斎藤に向かって微笑んだ。あるいは相手が雷電のように人の姿をしてなかったから、優しく微笑むことが出来たのかも知れなかった。
口を開く。
「おかげで俺は助かった。礼を」

首を振る、<かなり>斎藤。略せず表現すると、英吏が人間扱いするので、斎藤はかなり人間に戻っていた。
 涙を流しながら斎藤は小さく言う。
「斎藤さんは、こんな姿じゃない……」
「意味が良くわからん」

英吏はそう言ったあと、クイーンオブハートを見て、意味が分かるかと、目で問うた。

クイーンオブハートは首をちょっと傾げた。

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