NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(49)

 先内は、じっとしている。
怖くないと言えば嘘であるが、雪子の方が怖いに違いないと思って、これに耐え切った。
雪子は、一人に慣れていない。いつも自分についていた。


ジジの、重さと鼓動を感じる。まだ死体のそれではない。

そのうち耳が聞こえて来る。ジジの毛皮をかきわけ、外に出た。たっぷり土をかぶっている。

入って来る土にむせて、そこではじめて、バイザーが壊れていることに気づいた。

「先内君!」
 眉を持ち上げる前に声が聞こえた。
「牧原君。なぜここに?」
 なんとなくそちらの方を向いてしゃべる先内。
別に意味はないが、なんとなくそうした方が誠意が伝わるような気がすると先内は考えている。

 優しい声で、返事が帰ってきた。
「妹に親切にしてくれた人を、ほっとけなかっただけさ」
「その妹さんは、まだいるみたいだね」
「うん。僕にしがみついてる」

先内はうなずくと、今度は調子を変えて口を開いた。
「竜造寺君が死にそうだ。手伝ってやってくれないか」

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 丘の上で観測に勤しむ國分は、先内と竜造寺に呼びかける一方で必死に煙が上がった周辺を観察していた。

天にあがる一筋。國分は善行への無線スイッチを入れる。
「こちら國分。信号弾! ピンク! 紅・結城は攻撃に成功!」
 しばらくの間。善行の声を聞こうと國分は耳を澄ます。

「あとは敵の本隊だけですね」
善行はそう言った後、國分のうめき声を聞いて続けて静かに言った。
「いや、まだですか」

そうして肩につかまった白猫にうなずくと、目を細めて空を見上げた。

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 ヘリの、爆音だった。
國分は嘘だろとつぶやいて双眼鏡を覗いた。
もとは人類の戦闘ヘリの表面に、菌糸のようなものがはりついていて紅い目をぎょろりと動かしている。

うみかぜゾンビ。陸上部隊にとって最悪の敵だった。
それが50を越える数で近づいてくる。

英吏を、見つけた。

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一方その頃。村、一人きりになった教室。

 斎藤は、しゃがんで落ち込んでいた。何のつもりか、机の下に隠れている。
涙が出そうなので、奈津子ー。奈津子ー。最強の子ぉーと、歌って元気を出そうとしていた。

駄目だった。涙で声が詰まった。それで、ポロポロ泣いた。

生まれてはじめて好きになった人は、もう誰かのものだった。
その人は全部の嘘を見抜いていて、それで優しくしてくれた人。
相手は長い黒髪で、綺麗なお人形さんのような人。

心が暖かくなったり落ち込んだりで忙しい斎藤。
紅さんと比べるといかにもやっつけ仕事な自分の髪が、とても悲しく思えた。背が高いのも嫌だった。不器用だし、ちゃんと包帯だって巻けないし……いい所なんかないし、でも……

それは斎藤が大泣きしようと息を吸い込んだ時、だった。

小さな鈴の音。斎藤が顔をあげて見れば、毛がふさふさで目が大きい立派な立派な黒猫が礼儀正しく座っていて、少し首をかしげていた。

涙を引っ込める斎藤。萌先輩の猫。

「何をやっている」
黒猫は言った。

びっくりして目を大きく開けた斎藤を無視して、黒猫は言った。堂々と。
「御身は恩義を返すのではなかったか」

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