NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(36)

 國分政昭は善行から離れ、先行している。
距離は1000m。これを越えると小隊無線が使えなくなる。
戦車無線は大型なので20kmは楽に届いたが、歩兵はそれほど大型の無線を装備することはあまりない。
1000mというのは着用しているウォードレス彼方に組み込まれている無線装置の限界であった。これでも、他のウォードレスよりマシである。
彼方は山岳師団が山狩りすることも考えて比較的大容量の電池を装備した長い距離到達する無線を装備していた。

 一般に、ウォードレスに内蔵する小隊無線は200mを基準に作られている。
この200mには理由があって普通の小隊規模で防御正面を最大200m以上取ることはありえない、つまり両翼でこれ以上に散開することはないから、という考えであった。
これ以上の距離では別の無線装置を使え、ということである。
 分隊長や小隊長の装備する指揮官型ウォードレスはこの辺を踏まえて無線を強化してあった。

 どえらいところだな、ここは、と國分は走りながら思う。
善行が子飼いの部下と友人のように話していることに、度肝を抜かれていた。

 あんなんじゃ死ねと命令しずらいんじゃないかな。
國分は考える。戦争の基本はそれだった。士官と兵士が必要以上に仲がいいと、危ない。馴れ合いは容易に権威を下げ、命令違反を誘発させる。

 勝っている時はそれでもいいだろう、部下は機嫌がいいので命令に従う。
だが、負けている時はどうだ。今はどんな時だ。

 國分は山岳騎兵の馴れ馴れしさにも恐怖を覚えている。
だれかが死んだ時に、こいつら全員心を壊すんじゃないかと、そう心配した。

善行さんっていやあ英雄だが、そりゃ本当なんかいな。
そう、考えた。

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 雪子が手を伸ばすと先内の航空動物兵器、ザップが通信筒を落として旋回をはじめた。

 すぐさま先内の文を読む雪子。盲目で雷電の上に乗って急いで書いている関係で文字がくずれてはいるが、雪子の場合、何の問題もなく読める。理由としては愛以外に言いようがない。

「合流しました。ただ輝春ちゃんが、精神ショックで」
「牧原兄妹は撤退。竜造寺、先内は敵に接敵、情報を通報せよ」
「はい。すでにそのように動いています」
「結構」

 善行は少しだけ笑った。みんな素質は十分だ。あとはもう少し僕の命令を聞いてくれればいいんですけどねえ。

「新しい座標は」 善行はそっとスキピオから差し出された木の葉の地図に目を通しながらそう言った。
「今拾得しました。はい」 雪子は素早い。うなずく善行。
「こちら100。201、國分君。P3の丘へ オクレ」
「こちら201、P3移動 了解 オクレ」
「100より101、102。車両停止後砲戦用意。弾種は榴弾 オクレ」
「101了解」瀧川の声。
「102了解」舞の静かな声。
善行は、地図から戦場を鮮やかに想像しながら口を開いた。
彼の身は人間だったが精神は猫であり、魂には翼が生えていた。

「102、芝村さんはプログラミング開始。長距離砲戦データリンクして101スレーブ オクレ」
「102、了解」
「101、統制射撃用意 オクレ」
「101了解 陣地変換先は? オクレ」瀧川の声。
「D4 D5に」
「101了解」

「アゴヒゲ、あたしたちは?」
コガに乗る結城が言うと善行は迂回してF11にといい、本当ならもう少し雷電がほしいですねと言って笑った。

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