NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(34)

 竜造寺は部隊のなかでもっとも雷電を扱うのが巧い。
優しい彼の雷電ジジをよく御して、木立の中を駆け巡っている。

「いいのか、こんなに速度を出して」
 竜造寺の背につかまって移動する先内が、注意を喚起するようにそう言った。雷電も生き物であるからには疲れる。戦場について息も絶え絶えでは戦闘の役に立たないのではないかと、言った。

「大丈夫。僕のジジは走るのが得意だ」
竜造寺の返事は短い。
「それに、牧原兄妹が心配だ。急がないと」

 先内は意外な気がした。それには理由があった。口を開く先内。
「牧原の兄はあれで英吏より冷徹だ。戦うならさておき、ただ逃げ回るだけならあまり心配はいらないと思うが」
「妹さんがどうかは分からない」
 竜造寺は手早く言うと、ジジの背に触れた。急ぐジジ。
「なるほど、さすがフェミニストは違う」
そして納得した様子の先内に、竜造寺は言い添える。
「女の子が好きだと言ってくれ。素直に」

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 竜造寺の読みはあたった。
牧原倖は苦戦している。妹を前に抱いたまま、彼の雷電、ブラックに足だけで指示を出し、片手で騎兵銃を操っていたからだ。

 泣いてすがっている双子の妹を誰よりも冷たい目で見た後、追いついて来た空飛ぶ頭、ヒトウバンに至近距離から騎兵銃をぶっ放す。

いくつか穴をあけて地面に叩きつけられ、遠くなって行くヒトウバン。両手で保持できないせいで銃が反動で跳ね上がり、牧原倖は筋トレしておけばよかったなと他人事のように思った。
廃莢口につけられた廃莢袋には廃莢がつまってじゃらじゃらと音を立てており、倖は弾切れが近いことを知る。

倖はあえて反転して敵のただ中に突っ込み、弱そうなゴブリンを射撃した。脚がちぎれて吹っ飛ぶゴブリン。

敵があわててゴブリンを守ろうと動く。
倖は、積極的に動かない敵の中に敵を引き付ける習性がある奴がいることを知っている。

(まあ、僕に対する妹みたいなものだろうな)
そう思いつつ、運が悪かったねと他人事のようにつぶやいて手榴弾を投げつける。 敵はこちらを攻撃するよりも大事なものを守ろうと動く。そこが倖の狙い目だった。爆発。敵の攻撃が弱まる。

すぐには死なないが数時間後には死ぬぐらいに敵に攻撃する。それが倖の生き残る秘訣だった。敵の血や涙を利用する戦術が、彼と妹をここまで生き延びらせている。

今度こそ全力で逃げ出す倖。
戦争はいやだねと、そう言った。

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