NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(32)


善行はマイクのスイッチをいれると、優しく言った。
「聞こえますか」
「聞こえてまーす」
 雑音交じりの瀧川の返事。
「聞こえている」
 クリアに聞こえる舞の声。
善行はウォードレスを着て悠然と部屋を出ると、集合した兵員に敬礼した。荒木、結城、紅という女性ばかりの編成だった。先の戦いで負傷している源と英吏は待機休養を申しつけている。

口を開く善行。
「しばらくは亀のように隠れているつもりでしたが、そうはいかなくなりました。中隊規模の敵が近づいて来ています。V4、数60、アンフィスバエナ。想定301-教則11」
「敗残兵集めた混成小隊じゃ大変そうだ」
武器のセレクターレバーを引きながら口を開く瀧川の声は、どこか優しい。対応する善行の声も、負けずに優しかった。この男たちは、戦場では優しくなる。
「そうですね。だがまあ、ちょうどいいことに貴方がたがいる。戦います」
「逃げる線はないんだな?」
確認をする瀧川。戦略的に無駄な戦いは、彼の嫌うところである。
善行はその言葉を頼もしく思いながら、明確に否定した。
「ありません。ここには軍が本来守るべきものがあります。敵が死ぬか、我々が全滅するかです」
「なんだそれは」舞の声。

 善行は三秒の沈黙の後、大股で歩きながら口を開いた。
「正義と建前だ。国家とその実行機関である軍は国民とその財産を守る。僕は公僕にして隊長として建前を守ることを命令する。正義を守れ」

舞は、善行をどこか笑って言った。
「了解した。国がどうあれ私の法は戦いを要求している」
「まあ、なんだっていいけど村の人脱出できないなら戦うしかねえな」
瀧川は簡潔にそう言うと、想定と教則に沿った手引き書を画面に表示した。士魂号のグリーンディスプレイからフルカラーディスプレイになり、視認性は大きく向上している。手引きに沿って武器のプログラムパターンを変更。
瀧川は零式減口径砲×2を選択する。
プログラムどおりに左右の手が動き、所定位置に配置された零式減口径砲を握った。

善行が、正義最後の砦から出陣して口を開いた。
「結構。では僕の猫の旗をこの地にも立てましょう。そうして誰にも彼にも教えるのだ。地上のどこにあろうとも、人の尊厳を守ったと」


 瀧川と舞は自動操縦に切り替えて一度機体の膝を曲げて竪穴(ピット)の壁を機体の膝で押して上半身をのけぞらせると立ち上がり、クイックターンしてスロープを伝って歩きだした。
一度竪穴の中に沈んだ機体が、だんだんその姿を外界に表す。
 驚いた鳥たちが、一斉に飛んだ。

 なんのモールドもない、のっぺりした頭の人型戦車が現れる。自衛軍伝統の濃い緑色に塗装された、新型機だった。

栄光号本国仕様、その試作11号機と12号機は実戦評価をかねて当代最高の人型戦車運用の専門家である善行の元に優先配備されている。
 この機体、外見は士魂号Mに良く似ている。

元々栄光号本国仕様の最初期生産型は外装、装甲板ともに胸部回り以外の全部を士魂号M型標準装甲から流用しており、これが目立って両者の印象を近づけている。

大きな違いは仰向けに転倒した際にパイロットが負傷するケースが多発した関係で……コクピットハッチのレイアウトが前後逆になったことである。
栄光号は、前から乗り込み、その分手の混んだ装甲分割方式を取っていた。

善行は二機の人型戦車を見上げてにやりと笑うと、眼鏡を指で押して戦闘指揮を開始した。

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