NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(14)

「大丈夫ですか?」
背中でぐったりしている主人を心配してぐるぐるあたりを廻っているグリンガムに近づいて、善行は言った。

顔をあげる源。うなずきながら口を開いた。手の指が、倍ほども腫れていた。色も変わっている。
「大丈夫だ。痛み止めが欲しいところだが」
善行は源の指をちらりと見て、これを無視した。口を開く。
「使って貴方が意識をなくす前に情報をください。芝村……英吏くんは?」
「いや、そんなに効く薬じゃなく、気休めのほう……英吏は敵のど真ん中を抜けて救助者を探している。俺が引き連れて来たよりも、ミノタウロスは3倍いるはずだ」

善行は、源の報告に対してなんの感情も込めずに普通に言った。
「無謀ですね」
「……なんだと……? アゴヒゲ、英吏は手前の看板を守って戦っているんだぞ、なんだその言い方は!」

 善行の表情は光を反射する眼鏡のせいで分からない。ただ、淡々と口を開いた。
「どんな建前ですか? それに自分の命よりもどれくらいの価値があるとでも」

源は力をこめて身を起こしながら善行を見下ろした。まっすぐ善行を見返した。
「正義だ。お前は正義を守ると言った。だから俺たちはそれに従っている。それの何が悪い。何の言い様だ、コラ。なめてんじゃねえぞ。あぁ!? 手前がボスで俺たちは兵隊、俺たちはお前の看板を守って戦うのが筋だろが、コラ」

 雪子にあまり効かないので有名な痛み止めを撃たれつつ、先内にもう片方の腕をつかまれながら源は叫んだ。
「こっちは筋を通している、ならお前も筋通せや!! それともその看板は嘘っぱちかよ、アゴヒゲ野郎!!」

 善行は眼鏡を指で押し上げながら言った。
「正義とは無謀ではない。正義を貫くのは無茶だが、だが貫くと僕は言っている。無茶との戦いにはやり方がある。やり方を考えてくださいと言っているんです」

善行は怒っていた。何よりも自分に。そして背を向けた。部下達に言い放つ。
「英吏くんを救出します。全速でついてこい」

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 英吏はミノタウロスが入って来れない森の中を逃げていた。追ってくるのはゴブリン達と、ゴブリンリーダーだけ。いや、新たに一種類。空を飛ぶ人の首。ヒトウバン。

 普通ならこれらにも楽勝で逃げられるはずだったが、救助者を抱いているせいとこれまでの酷使で速度が落ちていた。

 ヒトウバンが背中から英吏の肩を、首を噛み千切ろうと盛んに飛んでくる。
ナイフでこれらを切りつけ、あるいは突き刺しながら、英吏は息も荒いクイーンオブハートの首筋を叩いた。

その一事でクイーンオブハートは最後の力を振り絞って走り始める。

彼は何も言わず、ただ世界をあざ笑うように金髪の美女を抱き寄せ、口の端を歪ませてナイフを振るった。今度は2匹、いや3匹か。

 減装薬を使った騎兵銃特有の軽い音。ヒトウバンの一匹が気持ち悪い音を立てながら地面に落ちて転がっていった。しゃがみ、両手でしっかりと騎兵銃を構えた紅・エステルだった。

「バルト! しばむらを守れ!」
 傍らで控えていた雷電がヒトウバンの群れに咆哮しながら襲い掛かる。
騎兵銃で弾幕を張りながら、英吏に走りよる紅。
「しば……むら」
「紅か。来るなら源だと思ったが」面白くなさそうな英吏。

 グリンガムの咆哮、馴染み深い黄色と黒の雷電が、バルトに続いて戦闘腕を伸ばして戦闘を開始する。
源が、嫌そうな顔をしながら英吏に近づいて言った。
「注文がこまけえんだよお前は。2番目には来てるだろうが」
「ふん。たいしたことの無い奴だ」
「うるせえボケ、殺すぞ」

 電光石火の動きで雷電コガが、青竜刀を構えておりゃぁぁぁ!と叫ぶ結城火焔を連れて参戦した。カトラスを低く構えた善行が、まっすぐ走って敵の只中に突っ込んでいく。

 音も無く笑う英吏と源。
「紅、すまんが、この女を頼む」
「しばむら……は」

 英吏は紅から騎兵銃を受け取りながら笑って言った。
「こいつと決着をつける」
「やるかコラ。今日の撃墜数では俺が上だぞ」
「勝負はこれからだ」
 源と並んで英吏は善行を追い始めた。
その背を森の中でもほとんど速度を落とすことなく89式隼、あの鳥形の動物兵器達が追い抜いていった。ヒトウバン達とドッグファイトを展開し始める。

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