NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(12)


場面は、戻る。

疾走する二匹の雷電の背で、英吏は源に声をかけていた。
「きついか?」
「いいや、まだだね」
 グリンガムにしなだれかかりながら源は、あえて元気そうに言った。
笑う英吏。背には敵が山ほどついてきている。
「見上げた不良だ」
「へっ、グリンガム。たのむぞ」

グリンガムはクイーンオブハートと並んで飛んだ。着地。間髪いれずに再び飛び、3度これを繰り返した。
「見えた。あれだ」

 白い花の咲く野の中で、伏せている兵士。髪は引っ詰めている。
グリンガムは全力で走りながら、戦闘腕を延ばすとやさしくその体を引き寄せた。

「生きてるか」疲れから顔を上げれない源が言った。
「駄目だ。死んでる」英吏の声。
「くそ」目をつぶる源。

 源としては遺体を持って帰ってやりたかったが、英吏は死者に意味を見いださなかった。ナイフで小指を切り取り、識別証をはぎとってグリンガムに死体を投げ捨てさせた。
 ばらばらの方向に四肢を動かしながら死体がバウンドして転がって行く。追ってくるゴブリンが何体か、これに巻き込まれて転がっていった。

源は、すまねえとつぶやくと口を開いた。
「逃げるぞ」

2秒考える英吏。口を開く。
「いや、まて。まだだ、もう一度探す。お前が視たのは別のやつかも知れん」
「もう一遍敵の中を抜ける気か」

源の言葉に、うなずく英吏。
「そうだ。お前はそのまま逃げろ」
「へっ、見上げたデブだ。なんだ、悪党やめたのか」
笑う英吏。
「どうとでも言え」
「俺の指じゃ敵を引き付けるしか役にたたねえな。死ぬなよ英吏」
「俺の命だ。俺が一番大事にする。お前こそ死ぬな。お前は善行のようになるんだ」

源は笑って返事をした。

片方の腕でグリンガムの首筋を叩き、向きを変えさせる。
最後まで敵を引き付けるつもりであった。

 友の律義さに微笑み、クイーンオブハートを操って反対方向へ旋回する英吏。残った手榴弾の全部のピンを抜きながら、敵の半分に突撃した。

投げる。爆発する。

爆風を浴びながらクイーンオブハートは主人と共に敵中を駆け抜けた。杉林の中に突っ込む。

 賭けだ。林の中を疾走しながら英吏は思う。俺の賭けではない。助けられようとする者の賭けだ。
運が良かったから、俺と源を呼び寄せた。あと少し、その女に運があれば……

 英吏は笑った。クイーンオブハートとその名を叫ぶ。
賢いクイーンは主人の心を理解して、さらに速度を上げながら戦闘腕を伸ばした。

捕まえた。長い金髪。

 英吏は母親に似ているなと自分自身が嫌な顔をする感想を抱きながらそのまま疾走する。

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