NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(10)

 ずっと二人の、応援をするつもりだった。
石田咲良。あの青い髪を隠すことも知らない不憫な娘。
最初に見た瞬間から、悲しい子だと分かっていた。
悲しいことが何かも分からないくらい、悲しい子。
俺の妹。

 心をなくして生まれてくれば、まだ良かったのに、そんな慈悲すら与えられなかった妹。どうにもピースが足りないパズル、何もかも足りない知識をどうにかしてつなぎあわせて人並みに生きようとする子。馬鹿な男達の哀れにすがらなければ日常を生きることもできない。

自分より下が居れば嬉しいかなと思っていた。
自分より悲しい存在があれば自分は楽になると思っていた。
嘘だった。工藤百華は苦しんでいた。

 手をさし延ばして助けられたらと思った。
俺が味方と言ってやりたかった。その手で抱き締めてやれれば、どんなに心を安らがせることができたろう。

出来なかった。ブルーヘクサが群れれば、それだけで自殺行為だったし、それに工藤百華には年老いた伯父がいた。
ブルーヘクサは嫌われる。その味方もそうだった。売国の政治犯か重犯罪者の子弟か、ブルーヘクサと言えば、世間ではそういうものだった。

だから。

 あの間抜けでお人よしの谷口竜馬が哀れとかそういうものでなく、愛で石田咲良の世話を焼いているとき、工藤百華は自分を恥じた。大好きだった伯父の一番尊敬するところを、自分が受け継いでいなかったことに気づいてしまった。自分の足がすくんでいたことを、震えていたことを、悲しく思った。

だから二人の味方をしようと思った。それだけは本当。何もかも嘘だけど。それだけは。

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 最初、谷口相手にいやらしい気分になった。慣れていない感情に、工藤はひどく戸惑った。
続いて、石田咲良の着替えを手伝う時に、またいやらしい気分になった。こちらは慣れた感情だったが、自己嫌悪した。

 自分は駄目だと思った。だから、罪滅ぼしの気持ちで一所懸命二人を応援した。

でも体と同じで心はさまよい、男くさい谷口が歯を見せて笑うのに身体が反応した時は、絶望した。自分の正体を知っても普通に付き合う谷口の態度が、それに拍車をかけた。

あのバカが横山とデートなんかして二人が仲たがいした時、咲良の味方をしたのは当然だった。こんないい娘をお前なんかにやれるかと、本気で腹を立てていた。
半分は谷口の態度が、自分の好きな谷口ではなく、それで腹を立てていた。

 谷口竜馬は石田咲良だけを見ていればいい。
多くの女が思うようなことを、工藤も思っている。これを、意外に一番明確に表現したのは渡部愛梨沙だった。それ以来、工藤は渡部を見直した。

 二人の仲たがいが終わって、クリスマスを過ぎた時に、二人の関係が変わったと、工藤は見抜いた。いつもつぶさに見てきたから、すぐに分かった。谷口にふったらすぐ相談してきた。頬をつねりたいという感情を抑えながら、横山に教えてやれ、皆にもと、そう言った。

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