NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(7)

 雷電という戦闘獣、動物兵器は食欲が満たされても戦闘欲や殺戮本能が満たされることはない。死ぬまで永劫に満たされることはない。常に殺し、狩り、魂のそこから喜んで敵の息の根をとめる。
それはどうしようもないくらいに人が愚かしく、その罪をこの動物兵器たちが受けたためだった。

 幻獣の小さな群れを食い殺した後も、いや、だからこそ雷電は、次の獲物を探している。

「どうした、英吏」
「静かに」

攻撃力重視のせいか、主人のあまやかしか、少々太り過ぎの感がある源の雷電、グリンガムと比べると英吏の雷電クイーンオブハートはほっそりとしていて、そして完全に英吏に服従していた。
 殺す時の声以外は立てることもなく、巨大な影のように英吏に従う。

そのクイーンが、英吏に頬を寄せた、40倍以上のズーム能力がある目を動かし、主人を見る。

うなずく英吏。
口を開いた。
「人がいる」

グリンガムの喉をまさぐる源の顔が、にわかに厳しくなった。
「俺達以外にか。まだこの辺に?民間人か」
「わからん。敵もいる。どうする。健司、お前は感じないか」

源は目を閉じた。意識を集中する。
 レーダーも誘導機もない山岳騎兵では、動物兵器の嗅覚や直感以外にも、非公式にダウジングや幻視を使う。どれだけ非科学的だと笑われても、普段から動物兵器たちを率いて戦う山岳騎兵は、この種の力を、索敵の補助として長年使っていた。
 特に英吏はきちんと統計を取って、体系立てて部隊戦力としてこの種の能力を使用する。
彼からすれば生き残る役に立てばなんでも使うべきものであり、その中にはすべての禁忌とあらゆる冒涜が含まれていた。

 源の身体から、源が抜け出る。空に上がり、遠くを視る。視えた。

「黒服の女。一人。敵はゴブリン、ゴブリンリーダー」
「ミノタウロスは」
「視えん。くそ」
「いや、いい。よくやった。厄介だが、それ以上ではない」

 英吏は優しく笑った。クイーンと源以外には戦死した仲間しか見たことのない笑顔だった。
 絶対の自信をもって主人の命令を待つクイーンを待たせ、英吏は口を開いた。
「どうする、健司」
源は静かに言った。
「俺達はアゴヒゲの部下だ」
「そうだ」
「あいつはなんて言った」
「正義を守れだ」
それで源は、不敵に笑った。
「じゃあ考えるまでもねえ。隊長の命令を守ろうや」
「まったくだ。お前が相手だと話しが速くていい。援軍は?」
英吏は服を脱ぎながらそう言った。
源も、荒々しく服を脱ぎながら口を開いた。グリンガムの背に下げたサックから”彼方”を取り出した。腕に装着を開始する。
「呼ぶさ。手荒くな」

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 彼方とはウォードレスである。ウォードレスとは戦場で着る装甲と人工筋肉で出来た服である。

 通常ウォードレスは専門の施設で着用を行うが、いつも山中をうろつく山岳騎兵ではインナースーツなしで素肌から着れるウォードレスを開発している。それが、”彼方”であり、男性用をA型,女性用をB型と言った。

 二人一組ですばやくウォードスをつけていく。言葉はなく、合図もない。
ただ、速度は速い。瞬く間に二人の鎧武者が出来上がった。

彼方は手軽なものの肝心の人工筋肉の性能が良くなく、量産は西日本のみ、僅かな数にとどまる。とはいえあるのと無いでは大違いで、山岳騎兵にとっては東日本から送られてくるウォードレス”アーリィフォックス”などより、遥かにこれをありがたがった。

 着用は完了した。互いを目視で確認して着用が正しいと確認すると源は私物の拳銃を引き抜いて空砲を入れ、銃口に信号弾を入れて発射した。

甲高い音を立てて信号弾が飛んでいく。

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