NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(3)

 食事が終わって茶を飲むという妙な風習が山岳騎兵にはある。
世俗では珍しくもないが、軍事組織では本当に珍しい。

 あたらしい部隊長、善行忠孝が始めた風習だった。
必要以上に急いで食事をすると消化に悪いという考えで、このような命令を出している。
こういうところには万全の気を使う人物なのだった。

「アゴヒゲ、これからどうするの?」
食事はちょっとでも煎餅はかなり食べる口を開く金城。この人物が言うと、その呼び方も気に入ってしまいそうですねと善行は心の中で笑ったが、実際には何も言わず、ただ眼鏡を持ち上げて目つきの悪い目で見つめ返した。

「とりあえずは治安確保です。村内で商店の焼き討ちなどが起きると困る」
皆が善行を見るので、善行は眼鏡をかけなおして口を開いた。
「我々ではなく、村人がね」
静かになる場。突然拍手が起きた。最大の敬意か、立ち上がった源と芝村からはじまって作内、荒木、竜造寺から全員に広がった。
金城が善行の背中を叩いた。

「良いこと言うじゃない、アゴヒゲ! 気に入った。アンタやっぱり、私たちの隊長だよ」
「はあ、そりゃどうも」
 叩かれたせいでずれた眼鏡を指で押し上げる善行。まったくこの部隊は、良く分からない。熊本の部隊なら皆、何も言わずに善行の言葉を命令と認識して活動していたろうし、攻青ならさも当然と言う風に言われる前に動いていたろう。

 この部隊は、どちらでもない。
理由を聞いて来て、気に入ったらそれぞれの意思表示をやってくる。その後に行動を開始する。
部隊と言うよりも、地域の集会みたいですねと善行は考える。で、私が自治会長と。

こんな悠長な感じで部隊運営できるんですかねと食後お茶を飲む命令を棚に上げた上に他人事のように善行は思ったが、頭をかいてやるだけやろうと考え直した。

どの道うまくやらなければ、死ぬだけだ。

善行は笑った。部下というか仲間達も同じ事は良く分かっているはずだと考える。
周囲は全部敵の制圧下であった。孤立したこの村にいる点で危機意識がないわけもない。

 その上でこれなら、それは練度の問題ではなく部隊のカラーだと善行は思った。
軍隊としてはとてもとても、風変わりなカラー。山岳騎兵というものはみんな、そうなのだろうか。

 部隊は全員が善行の顔を注視している。
善行は春風のように笑うと、では村内見回りと村外での警戒の二チームで活動します。といい、そうしてあたらしい伝説を一から築きはじめることにした。

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