NOTボーナス ガンパレード・オーケストラ緑の章(2)

「俺がおめえに甘えるわけねえだろ、バカ」

バカは貴方ですと言おうと考えて、黙る深澤。ここで理性的な応対をしないと僕までバカと考える。
「いいから黙っててください。僕は今難しい話してるんですから」
「へいへい。飯、まだかな」
「ご飯来たらガム捨てないといけませんよ」

返事は返ってこなかった。眼鏡を指で押す深澤。口を開く。
「食事中にガムかむような芝村でもやらないような大犯罪やらかしたら僕だけじゃなくて金城の姉御まで怒りますからね」

 深澤がうっかり尊敬してしまうくらい源は動揺しなかった。ひときわ大げさに腕をふる。
「へっ、金城がどうしたってんだ。あんな女くらい……俺と1個師団くらいが全力になれば引き分けぐらいにはなんとか」
「声、小さくなってますよ。すごく」
「黙れ」
「はあ? なんすか」
 背中を叩かれる。加害者=源をにらんで口を開く深澤。
「痛い! だからなんてことするんですか!」
「うるせえんだよお前は、男なら拳でこい」
実際に拳を見せ付ける源。その手になんかのるもんかと横を見る深澤。
「野蛮人みたいなことは絶対やです」
肩を落とす源。音を立てず笑いながら席につく竜造寺。口を開く源。
「お前がはそんな気合の入ってないこと言いやがるから俺は心配してやってんだ」
「ナニその言い方! 僕のほうが心配してやってるのに!」
「なんだとぉ!」

 長い足で横開きの戸を器用にあけて、両手に鍋を持った金城美姫が顔を見せた。
黒いストッキングの先の足の指先を器用に操って靴を履きなおす。さすがの金城も靴でドアを開けるようなことはやらないのであった。

取っ組み合いになりかけて動きを止める深澤と源。ちなみに食事前に暴れだすと金城の方がもっと派手に無敵のキックを武器に大暴れするので部隊全体で食事時間中は喧嘩禁止と、暗黙の了解がある。

 切れ長で釣り目で性格は怒った猫が泡をくって逃げ出すほどキツイ金城は、男から見ると理不尽なことに美人である。本人はにっこり笑って美人から蹴られるんだから嬉しいでしょ?と言うが、深澤や源から見るとありえねえ、何その傍若無人というであった。

 美人で料理当番(一番偉い)んだから人を蹴らないでも楽しく世の中渡れるんじゃねえかという、理屈であった。世をはかなむ理由がないのである。
もっとも金城は練習しないとなまるという理由で突然校舎を蹴ったりしだすので、もはやそういう理屈では動いてないようであった。ああ、なんという邪悪であろうか。


「みんな、食事だよっ」
元気が光り輝くように笑って口を開く金城。これだけ見るとどんな人間も魂を奪われる輝きがある。顔立ちよりもずっともっと綺麗で健全な響きだ。
もっとも、魂奪われても三秒で何ぼーとしてるのよと背中蹴り倒されて現世に戻るので、あまり心配は要らない。 背中に障害が残るだけが心配だ。

 源と深澤は背中を気にして作り物っぽくにこやかに握手して、竜造寺の隣に座った。
続々と部隊のメンバーが集まりはじめる。ちなみに遅刻するとおかわり組が迷惑するので食事時の遅刻はこれまた厳禁である。

 後ろから実質食事作りの指示をする荒木雪子が、これを難しい言葉で院政という……が、
おたまをそっと差し出した。マイクのようにもっておたまが曇るほど口に近づける金城。
もっとも男達は全員がすでに箸をもっており、色気どころではない。

口を開く金城。いつもは、きっちりかつスピーディに話す彼女も、この神聖な瞬間だけはかなり肩の力が抜けた感じでしゃべる。
「みんなー、席についてしまえー」

「うわーい」両手をあげて喜ぶ深澤。
「へへー」同じく両手をあげて喜ぶ源。
「もちろんついています」 竜造寺。 隣を見て、笑いながら両手をあげた。

 部隊全員が両手をあげた。ちなみにフライング防止であり、決して脅されて手をあげているわけではない。まあかなりそういう気分の人間もいるが。
その間に荒木雪子が、尊敬するしかない恐ろしい手際で食事を配った。
配り終わってうなずく雪子、うなずく金城。

口を開く金城。
「よし。では食べてしあわせになってしまえー。いただきます!」
「うわーい。幸せになりにいきますぅー」深澤。
「ういっす。いただきます」 名残惜しそうにガムと別れをつげる源。
「いただきます」ひたすら感謝する竜造寺。

 大食事レース開始。
すぐに深澤と源で互いの肉を奪い合う展開が開始される。一番大きな肉を互いの領土から箸で取り合うという血も涙もない抗争である。
はははと上品に笑いながらすごい勢いで食べる竜造寺。すごいところのお坊ちゃんだが、本人曰くの食べている間は敵と味方、貴賎なし、速度は力だ。であった。

 金城は一番最後に、みんなが嬉しそうに食べているところを女王のように睥睨して満足そうに頷いて着席すると、ちょっとだけ食べた。残った分は、男達にやった。
全員が女神だ、女神がいらっしゃると褒め称えた。

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