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<<   作成日時 : 2006/03/07 14:17   >>

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 蛮人を恐れてはいけないよ。
あれは理の外にあるが、ただそれだけのものだ。妖精と同じ。
良く見て、そして出来れば、味方をし。

<まじない師が幼いミーシャに言った言葉>






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 古の英雄が祭られている祠は血で穢されようとしていた。
小さな丘の上の巨大なにれの木の下の話である。

立ち寄った村で盗みを働いた、はすっぱなミーシャは鎖でつながれ、繋ぎとめられ、そこでミノタウロス達の餌に供された。
 叫び、小動物のようにうなり、戒めが外れないかと血が出るまで腕と足をばたつかせ、そして泣いた。泣いた後また叫んだ。今度のものは怒りではなく、恐怖だった。

 気づけば目の前に滅多に姿を現さない小さなネコリス達がミーシャの前に座っており、ミーシャは自分の死体の分け前を狙っていると呪詛の言葉を吐いた。

ネコリス達が逃げ出した。

 幻獣ミノタウロスが、群れをなして近づいてくる。その数は3。食いもしないのにただ殺す幻獣らしく、いずれも邪悪な顔立ちをしておりその背は7身長はあった。

丘をあがってくる。

ミーシャはここで、何もかも尽き果てて涙を流し、ついには神々に祈った。口にでたのは盗みの神ではなく、なぜだか大昔のまじない師が教えた、魔術の神の名と聖句であった。
一個銅貨三枚のケチな護符のやつだった。

にれの木が、風もないのに揺れた。

 にれの木の陰から造作もなく現れたのは、ミーシャが見たこともないような筋肉をした蛮人だった。
ミーシャが盗んだどの宝石よりも美しい、深い深い青い色をした瞳が印象的な、肉であるにも関わらず鋼鉄のような印象を与える肉体の蛮人だ。

一糸も纏わぬその姿で、ただその手に冗談のような長さの直剣だけを携え、蛮人は緩やかに歩き出した。

蛮人は雷鳴が落ちたかのごとく、天秤持つ正義の女神が超特大のZIPの呪文を浮気した亭主に使うごとく、ばるばるばると怒鳴り、そうしてただ一本の剣を頼りに坂道を降り始めた。

戦闘を開始する。ただ一人で、作戦もなく、ただ腹が立つから戦うようだった。
本物の蛮人だと、ミーシャは震えた。

 ただの一撃でミノタウロスの斧ごと胴体を両断し、次の一匹の打撃を返す剣撃ではじき返した。筋肉が膨れ上がり、蛮人は叫んだ。雷鳴のように。ばるばるばると。

 盗人の最後を見届けに来ていた村人達が逃げ出した。
古代の英雄が己の祠を穢されるのを嫌がって出てきたのだとミーシャは思った。
鎖に繋がれたまま目を走らせれば祠には”ターニ・キルドラゴン”とかかれており、ミーシャは竜を倒す人間が実在したのだと目を疑った。

逃げる村人に吐き捨てるようにどころか本当に唾を吐き捨てて蛮人は剣を無造作に持ち直すと、さらに現れた五匹のミノタウロスに一歩も引かずに前進を開始した。

 とりあえず一番大きなミノタウロスに向かって歩いていった。
右と左の斬撃を鷹のような速度で走りぬけ、一番大きなミノタウロスの眉間に深々と剣を差し込んだ。
引き抜くこともなく横になぎ払ってその脳髄を盛大にばらまいて、蛮人は次に大きなミノタウロスに向かい始めた。

 次のミノタウロスが逃げ出した。士気が崩壊した。
蛮人は追わなかった。辺境王の都ではミノタウロス殺しで賞金をもらえると言うにも関わらず、蛮人は蛮人らしくそんなものにはまるで興味がないようだった。

 こちらをむいて、近づいてくる。
ただ最後が違っただけだったとミーシャは目を瞑って、最後にあの大きすぎる肉棒で刺し貫かれた時に自分がなんと叫んで死ぬかを考えた。身を売るよりも盗みを選んだ自分に、最も皮肉な裁きが下されたのだと思った。

近くでしゃがまれた。目を開けば鎖を飴のように引きちぎって蛮人がミーシャの手の戒めを冗談のように指で砕いて解いて、そうして何も言わず、旅を開始した。何かを探すようだった。

 ミーシャは恥じた。法の神々の末席、猫の神の隣に魔術の神があぐらをかいていたことを思い出した。なぜ怠惰な猫とあからさまに嘘くさい魔術の神が法の神々に属するか幼い頃のミーシャは不思議でならなかったが、今その理由が分った。全ての謎は解けた。
 善き行いこそが法の神々を列する唯一の基準だったのだった。

そうしてミーシャはあわてて蛮人を追い始めた。
さしあたってすることがなかったし、法の神々が英雄を遣わしたからには必ず世界の危機が迫っているはずだという確信があった。

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