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zoom RSS ボーナストラック 世界の謎コース1

<<   作成日時 : 2006/03/01 17:05   >>

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 ひどく庶民的な一軒家の縁側で、一人の老人とペンギンが並んで庭を見ている。

老人は、孫が残したジャージを着ていた。
白くなった眉の上辺りをかくと優しく笑っている。
その老人は悪を吹っ飛ばす時以外は、大変に優しい悪の帝王であり、商売敵であるペンギンとも、たまにお茶を飲むことがあった。

むろん、プライベートの話である。

 悪の帝王は、笑ってお茶を飲む手を休めて煙草をくわえると、不意に口を開いた。
「そろそろいくかね」
「ああ。休暇は終わりだ」
 ダンディな帽子を被りなおしながら、ペンギンは言った。目を隠す。
器用にフリッパーを使ってネクタイを締めなおしている。

悪の帝王は寂しげに笑った。
「そうか。寂しくなるな。では私も、計画を進めることにするよ」
「次に逢う時は殺しあう時か?」
「それはそれで、わしにとっては悪くない終わり方だね。だがまあ一番は、孫に殺されたいな」
 ペンギンはやるせないようにライターに火を入れると、煙草を吸い始めた。
火を、悪の帝王に貸した。
「……業腹だな」

 悪の帝王はペンギンから顔を離して百円ショップで購入したつっかけで庭に出ると、ペンギンを振り返って飄々と笑って言った。
「わしの孫はそんな弱くはないよ。ハードボイルド。今、どんなに落ち込もうと、わしの孫は這い上がってくる。あの子はそういう子だ。うちの家系は、どんな仕事についても悪を吹っ飛ばすのが定め。流れて受け継いでいるのは血ではない。眼差しだ。わしらは眼差しだけを受け継いで戦うオーマよ。ならば立ち上がる、ならば戦うのだ。たとえ兄が相手で、わしが相手で、愛する女が敵だろうと。それが悪ならぶっ飛ばす」

微笑む悪の帝王。
「それはそうと、レイカちゃんがな」
「またレイカか」
 大物の悪党はだいたいレイカちゃんの親衛隊かファンクラブに入っているものである。悪の帝王も例外ではない。うちの孫の嫁に来てくれんかなとも考えている。

「いや、アホ犬の処刑に色んな悪の秘密結社が賞金かけた話の続きではなくてな」
 探偵7つ道具の入ったアタッシュケースを閉めながらペンギンはくちばしを鳴らした。
「早く言え。悪ってやつは、話が長くていけない」
頭をかくと悪の帝王は手短に話をすることにした。年寄りは気が短くていかんと思う。
「行方が分らん。セプテントリオンかも知れん」
 レイカちゃんを本気で害そうとする悪の団体の数は少ない。大体の場合、引退の記念にレイカちゃんと戦うというのが昨今の悪党のトレンドである。
握手してもらった後で戦う者もいた。

「付近の救援は?」
「あの辺りは宇宙海賊が多い。どこの船も必死に捜索しているはずだ。歴史保安警察よりも、ずっと懸命にな」
「……それで見つからないなら、世界移動か」
「たぶんな。緊急回避のための時間跳躍かも知れん。だとしたら第5世界周辺だ」

 ペンギンは煙草を庭に投げ捨てると、消しといてくれと言った。
歩き出すペンギン。その様は海に漁に出かけるペンギンのようだった。
「そうか、邪魔したな」

 多くの悪が喜ぶであろう悪の計画が進んだことを微笑んで、後姿に声をかける悪の帝王。
「なあ、ハードボイルド。俺たちの知らないところで、何か始まっているんじゃないかな。全ての世界を巻き込むような、そんな事件が」

 少しだけ振り向いて、ペンギンはくちばしを開いた。
「だとしたらどうする。お前は、生き方を変えるのか?」
「いいや。愚問だったな。わしらは、長く生き過ぎた」

悪の帝王は、優しく言った。

「わしに何かがあったら、孫を頼む。ハードボイルド」

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