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<<   作成日時 : 2006/03/06 05:04   >>

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 一方その頃。病院。

 咲良は、夢を見ていた。
竜馬が、自分のために全力で走ってくる夢だ。

 目を覚ます。

壁が吹き飛んでおり、右の唖然と左の呆然を無視して、懐かしい緑色のジャケットを着た竜馬が近づいてくる。

 酸素呼吸器をつけたまま、咲良は竜馬、遅いよと言った。

すみませんと言う谷口竜馬。これでも、本当に急いで来たんです。
 ゆっくり酸素マスクをはずす竜馬。その視線だけでばたばたと関係者を退け、恐慌に陥らせて背を向けさせると、綺麗に洗濯したブラウスとスカートとリボンと緑色のジャケットを着せてやった。靴下を履かせてやる。

咲良が、小さく言った。
「てぶくろも」
「はい」

そうして咲良を背負い、谷口はゆっくりと歩き始めた。
外へ、学校へ。

咲良は残る精一杯の力で、谷口を抱きしめた。

「泣いているの?」
「まさか。……嬉し泣きに決まっているでしょう。咲良」
「みんな、見てるけど、その名前で呼んでいいの?」

 村田や渡部が駆けつけていたが谷口はそれを無視した。
「ええ。もういいんですよ。もう誰にも隠さなくていいんです」

 咲良は、目をつぶった。
「そうか、よかった」

谷口は泣きながら坂道を登りきった。
もう、学校だった。



「はい、そこまでですよ。谷口先輩」

 谷口は顔を向けた。目を見開く。

綺麗な青い目をした。竹内だった。
足元には岩崎と航が顔をぼこぼこにして伸びている。

その隣には優しく微笑む妙に大柄な女。山口に、似ている。

 谷口は懐かしさに泣きそうになって口を開いた。
「お前、死んだと……」

笑う竹内。どこか変わったけれど、どこも変わっていない、笑顔。
「運が良かったか、きっと僕は誰かに護られていたんでしょうね。貴方も、貴方の恋人も。きっと護られていたんですよ。それに意味があるかどうかも分からないけれど、誰かが努力を重ねていたんだ。きっと、どこかで」

 竹内は歌うように言った。
「上田くんも、うまくやっています。菅原さんは、もう大丈夫。回復します」

 竜馬、抱っこがいいという咲良の声に、竜馬は咲良を大切に抱き上げた。
いつも大事だったけれど、今日はとりわけ、特別に。

目をつぶって、抱きしめる。

「見えるか、咲良」
「うん。皆元気で、良かった」

 咲良の声が予想以上に元気だったので、竜馬は驚いた。
儀式魔術開催中もライト板に延々と書き続けた加護が、文字通り美しい物語をつむぐ運命とやらに徹底的な抵抗を続けていたのである。
それはどんなに陳腐でも、延々と愛された終わり方を望む声である。

 竹内は優しく口を開いた。
「いいえ。まだです。まだ隊長が残っている。僕は結局のところ、そのためにここに来たんですよ」

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竹内は微笑むと、山口にうなずいた。

 山口が大きな袋をもって、歩いてくる。はい。どうぞ。大事に使ってくださいね。

竹内は口を開いた。
「第6、第7世界は孤立しました。おかげで世界移動しても上方世界に同一存在に害が及ぶことはない」
「お、おい、なんだそれは? 竹内」
「知る必要なんか、何もないんですよ。実のところ難しいことですらない。それは二人の娘のその両方を護る魔術だった。ついでに少数の生き残りと言う形で希望の種を残すことが出来た。こっちにも、あっちにも」

 竹内はそう言うと、大きな袋から2m近い巨大な剣を取り出した。
剣の腹には文字が書いてある。どんな暗闇も照らす魔法の文字だ。
苦労して持って谷口に持たせる。 もっとも谷口には、軽い武器だった。3本の短剣とふくらはぎまでのブーツ、ランタン。乾パン。チーズ、サラミ。
そして見事な白馬。賢そうな目をしたその馬をエクウスと言う。山口が登校に使っていた馬だった。

「いや、だからこれはなんだ」
「向こうに着いたら腰布に変えてください。ここに入れておきます。あ、あと、これポーションです。10本あります。一本で半月は元気で過ごせます。ポーションが切れる前に絶望の密林を抜けて死の砂漠を越えて神々の古戦場を抜けて銀の谷へ行ってください。そこには魔術師がいるはずです。どんな病も治す薬を持って。いいですね。貴方がありえないぐらい強いのは、このためなんですからね」

 咲良は、空先生の最後の著作を受け取った。それは魔術書だった。妖精用の。
谷口は咲良の青い髪に触れて口を開いた、
「……何か分からんが、咲良を直せるのか」

竹内は笑ってうなずいた。
「すごい苦労しますけど」
「分かった。身体を使えることが出来るのなら、俺にとってはさほどでもない」
 谷口の言葉は平坦だったが、豪胆だった。
強くうなずく竹内。
「その通り。貴方は、医者にはなれないが、古代の英雄になら、なれる。そして古代の英雄なら、どんな病だって直せるはずなんだ」

青い光が、集まり始める。 最後のライト投票は、圧倒的多数で魔術発動に必要なリューンを集積しているはずだった。

「もう時間だ。先輩、元気で、それといつかは戻ってきてくださいよ。僕達のように」

 もう読書に夢中な咲良をひょいと抱き上げ、大きな袋を背負って谷口はうなずいた。
「わかった」

 柔らかく集まる小さな青い光に分解されながら谷口はそう言った。
「まって! 待ちなさい」

 声。カーボン竹刀を持った横山だった。息を切らしている。
「やっぱり色々考えたけど、谷口は私と一緒になるべきです。咲良は、二人の子供と言うことで!」

 谷口が絶句して情報分解が終わる前に、横山は突撃した。横山も消える。

離れた場所ではしくしく泣いていた工藤が、主人の世界移動を感知して世界移動を開始した平穏号ごと、情報分解していた。

 飛ばされる。

ひどい展開である。 しかし読者投票の結果とあれば誰にも文句は言われないのが魔術の魔術たる由縁だろう。本当で本物の魔術師は大概の出鱈目をやってのける。


そうして笑って竹内は、航と岩崎も笑って光の中に投げ入れた。
白馬エクウスは吉田遥に額をごっつんして別れの挨拶をすると、闊歩して光の中に消えた。

「山口さんは、どうします?」
 山口は笑った。
「私は岩妖精よ。だから決まっているでしょう」

山口は優しく走って消えていった。


<小儀式魔術・白いオーケストラ 終わり>

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