戦闘詳報 青の厚志の代わりの援軍2

 東原希望は甘えを赦さない。
だがそれは彼女の個人的趣味であり、それ以上ではない。
本当にやらなければならないことがあって、本当にそれをやろうと思うなら、彼女は他の全てを捨てれるように、己の趣味を、捨てた。それが正しいことと知っていた。

それは例えば緊急で火星にいく場合である。

彼女は甘えることが好きではなかったが、その効能は正しく知っていた。
自分が可愛らしいかは自信がなかったが、相手はそんなところを見てないのも、知っていた。

だから深呼吸した。

自分がまだ子供なら、ただそれだけで動いてくるはずだ。それこそは希望の切り札であった。子供だけが用いることが出来る最強の剣。

 近所のおばあちゃんに借りた電話器に、背伸びして、希望は電話をかけている。
前夜から休電日でもないのに停電が続いていて最近の電話は動かなくなっていたが、おばあちゃんと同じくらい年代物の電話は、持ち主と同じように希望に力を貸した。

れいきゅーろっく ねえにいさん ねこさんねこさん……

電話がかかった。ちょっと大きすぎる受話器を両手でもって、希望はお願いがありますといった。

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 熊本に本拠があるヤヴァネットといえば、弾薬から希望号、映画チケットまで取り扱う伝説的な裏商店である。

ここ最近は青森から大量の注文があって儲かっているはずだったが、主人はさほど、喜んでもいない。
新井木と滝川はお断りという張り紙だけが、今日も寂しく揺れているからだった。

電話。

主人は苦い顔で出る。電話注文はなしだとなんど言えば……
「なんだ、お前か。足を洗ったんじゃなかったのか。……?」

主人は黒眼鏡を指で押して可愛い目を走らせた。

「いいだろう。それとの交換なら悪くない。伝説の1年靴下と交換なら安いもんだ。んで、誰と結婚するつもりだ? は? 白いオーケストラに出るから緑の章に登場はやめるだと? バカやろう、俺はお前用の特注制服を手配して……」

切れた電話。主人は受話器を叩きつけた後、久しぶりに笑顔になって仕事を再開した。

 翌日、通販部に新商品が並んだ。

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時は、戻る。
電話を両手でもって、希望は甘えている、

「あのね、うんとね、えっとね。おねがいがあります」
「どうした?」
「こまっているひとがいるのよ」
「お前は、どうしたいんだ」
「ほのぐらいもののなにもかもとたたかうの」
「なぜ?」
「私は希望だから」
「なるほど」

 電話は切れた。

電話を切った後で希望は名前も場所も時間も言うことを忘れていたことに気付いたが、だがそれでも満足してこの場所を離れることにした。

それでもやるのだ。あの人がなるほどと言ったから。
だからやるのだ。どんな不可能も理不尽も越えて。

希望にとっての王と長嶋とあと三割を足したような十割バッターは舞と彼だけである。

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