NOTボーナス ガンパレードオーケストラ白の章(39)

 谷口の心の誓いは、2時間で破れた。もっと正確には、咲良にあって4秒で崩壊した。
そっけなく挨拶する前に、なるべくこう、男女の距離を守りつつと身を引いた瞬間、咲良が傷ついた表情をしたからだった。

「おはようございます……ってどんな表情しているんですか貴方は」
である。咲良の表情に、決意は口から出る前に行方不明になってしまった。
2時間考えて崩壊4秒だからまあ根性なしとののしられても反論は出来まい。

気がつけば谷口は咲良を抱き寄せて抱き上げてあんまりそう言う表情をしていると、あの時自分は幼かったと後悔しますからねと言い、そして冷たく身を引くのは明日からにしようと、誓った。

 遠くを見れば工藤が口を隠して笑っており、谷口がにらむと、工藤は笑いながら目をそらした。

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「谷口、幼かったって、なに?」
 谷口にしがみつきながら、咲良は口を開いた。
いや、だからと思う谷口。この人はこう言うところがいかんのだ。と考える。
そう思いながら、距離を置くのは明後日にしようと思った。口を開く。

「まあ、その、子供のことです」
「子供……自衛軍でない学兵を指す言葉でしょ?」
「学兵でない子供もいます」
「知らない。軍に関係がなければ私には関係ない」

 至近距離から見つめられて、だんだん顔が赤くなる谷口。
咲良が、耳元でささやいた。
「なんで後悔するの?」
「ああすればよかったとか思うからです」
「それはおかしい。未来から見て過去をどう評価しても戦果が覆ることはない。指揮官は、その時の最善の指揮をとればいいんだ。未来の評価は傍観者の負け惜しみだ」

 目を細める谷口。
「空先生の言葉ですか」
「うん、先生はすごい人だ」

 咲良が無条件に男を褒めるのが谷口は面白くなかった。笑うな工藤。
谷口の表情変化を観察していた咲良が傷ついた表情で瞳を揺らしながら見ている。

激しく動揺する谷口。距離を置くのはとりあえず無期限延期にしようと思った。
ちなみにここまで20秒であり、谷口は出会ってこっち、事の最初から最後まで意識して咲良に冷たく出来なかった。
ずっと自分に正直だったとも言う。

「なんで工藤を見るの?」
「どう文句を言ってやろうかと……なにか」

 もみ上げを引っ張られる谷口。
「心配すると言ったくせに」
「心配してます」
「じゃあなんで他の人を見るの?」
「そりゃもちろん貴方が空……いや、なんでもありません。おっしゃるとおりです」
 うなだれる谷口。自分の心の狭さがいやだった。

 咲良も面白くない。ストレートに、谷口が隠し事したり他人を見たりしているのが面白くなかった。こう言うときはどうすればいいんだっけ。施しを受けない場合は。
「命令、私を見ろ」
「だからそんなことを言ってると後悔すると」
「意味不明。幼いのは悪いこと?」
「いえ。しかし、その、問題があります」
「じゃあ私、幼いのやめる」

 精神が外見相応になった咲良を想像する谷口。実のところ今とあまり変わらないような気がしてきた。ただ単に知見が広がって自分以外を好いてしまうかもしれないだけで。
「あ、いや、その、隊長は別に、隊長のままでも」

工藤がロリコーンと口だけ動かしているのを完全に無視して、谷口はええいと、咲良を抱く腕に、少しの力をこめてささやいた。

「自分が我慢できなくなったら、一生恨みますからね」

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