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zoom RSS エンドボーナストラック 瀧川ホームラン(3段階目)

<<   作成日時 : 2006/02/09 02:34   >>

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 結局無事で帰って来たにもかかわらず、萌は口をきいてくれなかった。

 それで、瀧川は黙ってしみる消毒液に耐え、欠けた肉片を補うバイオパッドの定着に耐え、包帯巻きに耐えている。

 夜のテントで、二人きりのことである。本当は善行もいるはずだったが、善行は眼鏡で金髪の芝村に会議だと連れて行かれて、まだ戻って来ていない。

 遠くで、虫が鳴いている。包帯を巻く音が、よく聞こえた。

 萌が力を込めて包帯をしばるので、瀧川の顔が踊ったが、泣きそうな萌ににらまれて、表情を戻した。目だけ上を向いている、神妙な表情。

 長い沈黙の時間に、瀧川はなんと言おうかと考える。

その方面においての師匠である瀬戸口の顔が脳裏に浮かんだが、脳裏の中の彼は全力で壬生屋から逃げていた。役に立たないなあと思いつつ、意識を戻す瀧川。

大泣きしそうな顔で、萌が瀧川を見ている。最近凶暴になったというか、ポーズでもぽかぽかするという感じで手をあげることも、珍しくはない。その倍は小さく笑うようになったけれど。

 なんと言おうかと考えて、考えつく前にしゃべり出す瀧川。
「大丈夫。俺、強いから。そう、青も使えやしない精霊手使えるからな」

強いというのは全くの嘘である。精霊手があれば強いというのも、大嘘だった。
そもそもにして強いから怪我しないということはなく、そんなに強かったら誰もが精霊手を手に入れ、軍が大量生産に入るはずである。

 そこまで考えたか萌の表情が変わるのを見て、瀧川はあわてて次の言い訳を考えた。

「あー、えーと。あ、でもほら、ほら、俺、結局ヒトウバンに腕かじられたくらいで大した怪我もなく無事に帰って来てるし。だから、だから怒るなって」 

大した怪我もなくはNGワードだった。萌の要求はもっと厳しい。蚊に刺されるくらいでなければ、怒った。

 萌は唇を噛むとあふれた涙を浮かべて、震える手を上げた。
瀧川はその姿に微笑んで口を開く。

「殴っていいよ」
瀧川がどこか優しくそう言うと、萌はポットを投げ付けた。
頭に命中して派手にぶっ倒れる瀧川。昼間の活躍台無しである。
ローマ猫は一日にしてならず、ペンギンは固ゆで卵で嫌な顔をするである。

萌は長じて夫婦喧嘩するたびに皿でもポットでも炊飯器でも投げつけて大泣きするようになるが、その萌芽はこの日においても見られることになる。


そして、5分後。

意識が飛んだ瀧川が目を覚ますと、瀧川は萌に膝枕されており、その頬に萌の涙がぽろぽろ落ちる状態だった。
萌は泣いたまま聞こえるかどうかの小さな声で彼女としては最大の悪口を言うことになる。

「ばか……」

 その可愛い声を聴いた瞬間、瀧川は唐突にがんばって行って来てねと言った新井木の笑顔を思い出して顔を赤らめると、そそくさと顔を上げてテントの隅で座り直した。
萌の顔も直視出来ず、頭をかきむしって照れ隠しと後ろめたさ隠しで口を開く。

「あ、そうだ、テレビ見ようぜテレビ、電池式はいいよなあ」

急いでスイッチオン。
画像が映し出される。

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