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zoom RSS NOTボーナス 居残り組みの歌

<<   作成日時 : 2006/02/27 01:47   >>

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 サウドは、遠い空の異教徒達のために祈っていた。罪を犯さぬよう、地獄に落ちぬよう。
異教徒だが、友人達であった。慈悲深き方は真に慈悲深く、幸いにして細かいことを問題にしない。

 目の前を、究極の異教徒が踊っている。名を知恵者と言う。
サウドはこの人物が嫌いではない。実際のところ、サウドが嫌いな人間は、この世に中々存在しないのであった。全ては同じ神によって作られた兄弟であると、慈悲深き方は教えている。

「何を、やっておるんじゃね」
 祈りを終え、絨毯を大事そうに巻きながらサウドは尋ねた。
ついに知恵者は巨大な真円を描き、その上を器用に歩きながら踊っている。

知恵者の足跡に青く輝く小さな鳥達がぴよぴよと集まっている気がしたが、サウドは無視した。
この人物はうかうかしていると常識と言うものを何もかもひっくり返し始める。

知恵者は踊りながら言った。
「そなたと同じだ。モハメド・アル・サウード」
綺麗なアラビア語にサウドは驚いた。
「ほぅ。ちゃんと発音できるんじゃな」

知恵者はにやりと笑う。
「そなたの名前だけだが。この間練習した」
「それは、嬉しいことじゃの」

 サウドは歯を見せて笑った。知恵者の向こう、その後ろに天使達が見える。
サウドにとって天使は太陽と同じ、必ず同じタイミングで出て、必ず同じことを言う。

<努力をしなさい、慈悲を施しなさい。貴方にはまだ出来ることがあります>
 サウドの一生とは天使の言葉を守る人生である。どれだけ商売をし、どれだけ財を喜捨しても、朝になれば天使が声をかけてくる。

<努力をしなさい、慈悲を施しなさい。貴方にはまだ出来ることがあります>
天使の言葉はいつも、同じ。サウドの反応も、また同じ。そうじゃな。で、あった。
サウドは天使に目礼すると、口を開いた。
「祈っておるんじゃな」
「いいや、やれることをやっているのだ。祈りはその一つにしか過ぎず、最高のものというものでもない。他にやりようがないから祈るだけのこと。だから、あきらめていない者は、どれだけ効果がないとわかっても、祈るのだ。モハメドよ」

 それは経典にあるとおりだった。サウドは満足してうなずいた。
一度の助けは百の礼拝にまさる。

この天使達から一番遠い詩人が、時折天使達を呼び寄せることを、彼は誰にも言わず黙っていた。本人が知っているかどうか分からないが、知っているんじゃないかと、サウドは疑っている。

知恵者はうなずくと、ゆるやかに確実に再び踊り始めた。延々と、飽きることもなく。まるでそうすることが、祈りよりも良いように。

「そなたはなぜ、青森に行かぬ」
知恵者の言葉に、サウドは答えた。
「経典にあるからだ。お腹の中にあるラクダの子で商売をしてはならぬ。生まれてくるのも生まれてこぬのも、未来を決めるのは慈悲深き方だけじゃ。知類がやってよいことではない。知類がやってよいことは今を努力をすることだけじゃ。努力して一所懸命、生きるだけじゃ。その先の未来は慈悲深き方が決める。今を努力しておるのなら、なんぴともそれを裁くに適わぬ」

「そうだな。我も、そう思う」
知恵者は輝くように微笑むと、ついには高速カニ歩きで分身しながら円を描き始めた。
いくつもの知恵者が足跡を残し、足跡にぴよぴよが出現する。灰色の汚い雛鳥。

サウドが口をあけてみていると、知恵者は懐から金と無数の宝石でで象嵌された色鮮やかな角笛を手に取り、ぷぉぉぉと吹き始めた。

その角笛こそはかつて多くの騎士が友軍を呼ぶ際に使った雄雄しき角笛であった。
騎士マルコが、騎士エイジャが、騎士アルフが、騎士イトリがそうしたように、知恵者は角笛を吹いた。

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