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zoom RSS NOTボーナス 清子さんハイ!(2)

<<   作成日時 : 2006/02/25 14:29   >>

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 戦車長 小太刀右京は74式戦車(愛称:清子さん)を愛している。
若い娘(90式砲戦車 愛称:麗子さん)に浮気したことがあったが、彼は結局のところこのお婆ちゃんとよりを戻しており、たぶん冗談ではなく一生を添い遂げるだろうと、そう考えていた。

普通に考えれば戦車兵の棺桶は乗機である。

「なんで新しい戦車をつくらんのかな上は」

と、小太刀は独り言を言う。1999年、12月も16日だった。
同乗する操縦士三輪も砲手加納は、黙って仕事をしていた。

「思うに麗子さん(90式砲戦車)じゃなくて試製90式を量産すればよかったんじゃないのかな」

 と、小太刀は続ける。反応ないので、付け加えたのだった。

思い出した頃に、三輪が、音を聞きながらペダルを操作して口を開き、
「北海道限定戦車なんか、意味はありませんよ」
と言った。

 日本の橋梁の多くでは、試製に終わった90式戦車は運用不可能である。
運用テストでは笑える話だが、どこかのアニメのようにAパーツとBパーツに分離して輸送している。
74式戦車改も、その制限のせいで重量増大が許されず歯がゆい改良にとどまっていた。

そう言う事情はあんたも良く知ってるでしょうがと、加納はのんびりと口を開いた。
「それに、士魂号あるでしょう」
「あんなものは戦車じゃない」
やっと会話になったと熱弁を振るう小太刀。ちなみに彼らにとっての士魂号とは士魂号L型、つまり車輪つきの120mm砲装備した戦車のことであり、人型戦車のM型のことではない。

小太刀は立ち上がって戦車への愛を表明した。
「どこの世界にあんな攻撃力偏重の戦車があるんだ。側面防御は25mm機関砲までだぞ」
「日本の、それも国産ですよ」

座席に座り、腕を組んでうなだれる小太刀。文句を言いたいことは政治から女の格好まであれこれ山ほどある小太刀だったが、国を持ち出されると弱いのだった。彼は世界を愛していたが、とりわけ日本の風景を愛してもいた。
それで、ぺたんこで座り心地が悪い座席はどうにも我慢がならず、立ち上がってハッチから首を出した。

 街中である。

血よりも貴重な油を湯水のように消費する74式戦車でこのくんだりまでキャラキュラやってきたのは慰問のためである。
 保育園に戦車を見せる(そして人気を取る)という大概の戦車兵なら心底嫌がる任務をこの小太刀は勇躍喜んで引き受けたのである。

もっとも二人しかいない部下に話をしたところ全員というか二人の猛反発にあい、彼は前日、一日がかりで座席に座って腕を組んでうなだれている。

「しかし」
 ハッチから顔を出したまま小太刀はつぶやいた。

「園児達に戦車を見せることは重要だ」

己に言い聞かせるように言う。そのうち本当にそんな気になった。

「特に国産戦車を見せることは重要だ」

 下で、加納が笑ったが、小太刀は無視した。
「自分達が本当に国から愛されていることを誰かが教えにゃならんのだ。製造業も、下請けも、戦車が通ったせいでこの道を修繕するおじさんも、俺達も、全部が君達を守りたいのだと信じ込ませなければ、生きるのはただの苦行になる」

「ゆえに戦車は」   腕を組んだままの小太刀。
「足回りがぼろで」  腕を組んだままの加納。
「夜間戦闘苦手でも」 腕を組んだままの三輪。
「国産だよな」    うなだれる小太刀。
「国産ですよね」   うなだれる加納。
「国産だしな」    胸を張る三輪。

清子さんは胸を張って進んだ。気難しいお婆ちゃんだったが、はたから見れば、たしかにその戦車は頼もしく見えた。

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